コラム～最も美しい女神へ～

テティスという女神が、ペーレウスというギリシア人の王と結婚することになった。

女神と人間の結婚ということもあって披露宴は大賑わい。

しかし、一人だけ会場に呼ばれなかった女神がいた。

嫉妬と争いの女神、エリスだ。

披露宴に嫉妬や争いはふさわしくない。ところが、エリスは披露宴に呼ばれなかったことに対して嫉妬してしまった。そりゃーそう。腹を立てたエリスは、披露宴に争いを持ち込むことにした。そして、宴会場に黄金のリンゴが投げ込こまれた。その黄金のリンゴには一言こう書かれていた。

 『最も美しい女神へ』

「そのリンゴは私のものだ」と、３人の女神が名乗りをあげ、争い出した。

１人目は女神ヘラ、彼女は主神ゼウスの妻で、世界の支配を司る。２人目が女神アテナで、戦いの女神。３人目が女神アフロディテ、美の女神である。「私が最も美しい」と、争うがなかなか決着がつかない。そこで３人は主神ゼウスのもとへ行き、最も美しい女神を選ばせることにした。

ゼウスは、妻であるヘラを選ぶことで他の２人に恨まれることを恐れた。そこでゼウスは「美の判定者」を指名することにした。指名を受けたのは、羊飼いの少年パリスであった。

 女神たちはパリスのもとへ行き、取り引きを始めた。

ヘラ　「私を選べば、あなたを世界の支配者にしてあげる」

アテナ　「私を選べば、あらゆる戦での勝利があなたのものになる」

アフロディテ　「私を選べば、人間の中で一番の美女をあなたの妻にしてあげる」

パリスは…

美女を選んだ。世界の支配よりも、戦いでの勝利よりも、求めたのは最高の美であったのだ。

こうして最も美しい女神はアフロディテとなった。彼女は、約束どおり最高の美女をパリスに与えた。

しかし

それは人妻だった。

その女性は、スパルタ王メネラオスの妻ヘレンだった。パリスはアフロディテの手引きで彼女をさらい、自分の妻とした。ところで、この羊飼いのパリス、実はトロイアの王子でもあった。妻をさらわれたスパルタ王メネラオスは激怒した。妻を取り返すべく、兄であるミケーネ王アガメムノンに協力を求めた。アガメムノンの号令で、全ギリシア軍が動いた。海を渡り、ヘレネを奪い返すためにトロイアに攻め込むのであった。

これがトロイア戦争の始まりだ。

あなたはこの話を信じますか？