読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.2(発展)ギリシア・ヘレニズム文化Ⅰ(哲学)

しま:今日から3回は、ギリシアとヘレニズムの文化です!まずはギリシア哲学!

 

生徒:先生、哲学ってなんですか?

 

しま:わかんないです。さて!世界で最初に哲学を生み出したのはギリシア人でした。畑仕事は奴隷の仕事。家事は全て女性の仕事。暇を持て余したギリシア人男性はいろいろ考えた。そして前6世紀頃より、哲学が始まった。

 

生徒:何を考えたんですか?

 

しま:最初のテーマは「世界は何でできているのか」だった。これ、哲学っぽく言うと「万物の根源は何か」となる。この万物の根源のことをギリシア語でアルケーと言う。イオニア地方で流行したので“イオニア自然哲学”とも言います。

 

生徒:ほぉ。それで、誰が何をアルケーだと主張したんですか?

 

イオニア自然哲学(前6世紀)

タレス「万物の根源は水」………“水をたれーす”と覚えよう

ピタゴラス「万物の根源は数」………“数がぴったり!ピタゴラス”と覚えよう 

ヘラクレイトス「万物の根源は火」………「万物は流転する」も、覚えよう!

デモクリトス「万物の根源は原子である」………原子が離れる時に痛みが生じるため、死は痛くない!と死の恐怖を否定したよ! 

 

生徒:あれ、デモクリトス、正解ですね。

 

しま:そうなんだよね。ちなみに水は固体・液体・気体と、三つの要素を持っているからアルケー。火は、常に変化するから、まさに諸行無常の世界観にぴったり。この時代は、真実を求めていたというより娯楽を楽しんでいたという側面が強いよ。

 

生徒:万物は火…か。はかないですね。鴨長明も『方丈記』の中でそんなようなこと言ってますもんね。やっぱり全世界全時代共通なんだなー…。

 

しま:続いてアテネの民主政完成期である前5世紀半ばに登場してきたのがソフィスト哲学だ。ソフィストを日本語に訳すと職業教師。アテネの民主政ってのは全員参加の直接民主政だ。そんな中で自分の意見を通さなくちゃならないんだから、身振り手振りや言葉のチョイスの弁論術が重要になってくる。それを教えたのがソフィストというわけです。覚えるのは1人だけでいい!プロタゴラスだ。

 

生徒:ん?「人間は万物の尺度」というのはどういう意味ですか?

 

しま:ここに1枚の新品のタオルがあります。What is this

 

生徒:新品のきれいなタオルです。

 

しま:そうだよね。よし、じゃあこれをこうやってゴシゴシゴシ…と、はい、今先生がこのタオルで顔面の汗を拭きました。さぁ、再び質問。What is this

 

生徒:使い物にならないボロ雑巾です。

 

しま:えっ…そこまで言う……。まぁいいや…、でも、世の中には、新品よりも価値が上がった!と思う人も居るかもしれないよな!ほら、新品のバットよりも大谷翔平が使ったバットの方が、価値が上がるだろ?

 

生徒:それなら納得できます!あ、でも…大谷翔平を知らない人からしたらそんなこともないか…

 

しま:そう!つまり、この世の中っていうのは主観的なんだ!すべての物の価値はそれを見る人間によって変わる!それが「人間は万物の尺度」という言葉の意味なんだ!絶対的な真理を否定しているよね!

 

生徒:なるほど!

 

しま:ところが、前5世紀後半になってくるとアテネペロポネソス戦争を経て衆愚政に陥る。目先の利益にとらわれて、自分勝手な主張をする政治家に民衆が踊らされている状態だね。こうなってくると、やっぱり客観的な真理が必要なんじゃないか…って考える哲学者が登場してくる。それがソクラテス

 

生徒:出た!ソクラテス!「無知の知」!

 

しま:おぉ!よく知ってるね!ソクラテスは、絶対的な真理の存在を説いた!彼が言う「無知の知」っていうのは「全てを知ることなんてできっこないのに、全てを知った気になっている者は、無知であることを自覚している私よりも愚かであるー!」って意味!それを相手に自覚させるために、矛盾を突いていく問答法を行うんだ。

 

生徒:その姿勢、勉強する上でも大切な気がします!謙虚に学んでいきたいと思います!

 

しま:で、そんなソクラテスの弟子がプラトンプラトンと言えばイデア論。詳しくはYouTubeで「イデア論 洞窟の比喩」で検索!

 

生徒:あ、ずるい!

 

しま:ちなみにこのプラトン、『国家』という本の中で民主政を否定しています。アテネの民主政は、役人選びも抽選が原則だったよね?でも、そんなんじゃダメだ!人格的に優れた哲学者による哲人政治が良いに決まってる!というのがプラトンの主張。あと、プラトンアカデメイアという学校を創設してます。これはアカデミーの語源。そしてそのプラトンの弟子がアリストテレス

 

生徒:あ!出た!アレクサンドロス大王の先生をやってた人ですよね!?

 

しま:よく覚えてたね!アリストテレスは哲学のみならず、論理学、政治学、自然科学など、あらゆる学問に精通していたことから「万学の祖」と呼ばれている!彼に学んだアレクサンドロス大王は、こんな言葉を残しているんだ。

 

「私は生きることをフィリッポス2世に、美しく生きることをアリストテレスに学んだ」

 

 生徒:なるほど。アレクサンドロスがペルシアの文化や風習を尊重した背景には、アリストテレスの教えがあるわけですね。

 

しま:アリストテレスプラトンが唱えたイデアを一切認めません。目に見えるモノ以外に本質的な存在があるとは考えなかった。だから、プラトンに比べてアリストテレスの本は読みやすいんですよ。

 

生徒:具体的にどんな著書を残しているんですか?

 

しま:『政治学』や『アテナイ人の国制』。あと、この人も学校を創設してる。その名もリュケイオン。はい!アテネ哲学終わり!

 

生徒:ソクラテスプラトンアリストテレス…ですよね。「ソックスぷら~り」の順番で覚えます!

 

しま:ナイスゴロ!さて、ここまで見てきたのは全部ギリシアのポリス社会のお話でした。ポリス社会ってのは、助け合いの社会です。一昔前の日本のような、そんな感じ。それがヘレニズム時代になるとどうなるかと言うと、自分の身は自分で守る、とっても心が不安定な時代になるんです。ポリス社会の中ではなくて、もっと広い社会の中で生きていかなければならなくなるわけ。そうすると哲学も、政治はこうあるべきだー!と言う主張より、幸福へ達するためにはこう生きるべきだー!みたいなものが流行ってきます。それをヘレニズム哲学と言います。

 

生徒:プリントに禁欲主義と快楽主義とがありますけど、やり方が違うだけで目指す目標は同じ、ということですね!

 

しま:そういうこと!我慢して、隠れて生きて、幸せになろうとするか、理性に従って生きていこうとするか、簡単に言っちゃえばその違いです。ストア派(禁欲主義)の代表人物がゼノン。“ノンノンゼノン”で覚えましょう!そしてエピクロス派(快楽主義)の代表人物がエピクロス!受験勉強はぜひ“禁欲主義”で頑張りましょう!

 

生徒:ノーーーン!