読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.8(西)地中海制服とその影響

生徒:先生…昨日は先生からのローマばりの徹底した分割統治っぷりに心が折れました…もう、しま先生のことをバカにしないので僕にも市民権をください。

 

しま:お!言ったね!じゃあ今日は一緒にポエニ戦争[前264~前146年]の流れと、それに伴うローマ社会の変質について勉強していこう!

 

生徒:はい!!!あ、ポエニ戦争の「ポエニ」ってどういう意味ですか?

 

しま:ポエニって言うのはローマから見たフェニキア人のこと!つまり、ポエニ戦争ってのはローマvsカルタゴの戦争ってことね!原因はローマがシチリア島を欲したから!当時ここは、北アフリカからカルタゴ人が植民活動を行っていたから、それでぶつかり戦争になりましたとさ!

 

生徒:どうしてローマはシチリア島を欲しがったんですか?

 

しま:それは、ローマにとってシチリア島

・大穀倉地帯

・地中海支配の要

になるからです!

 

生徒:なるほど!ってあれ!?ポエニ戦争めちゃくちゃ長いっすね!120年近くもやってるじゃないっすか!

 

しま:そうなんだ。ただ、大きく3回に分かれているから、それぞれの特徴を抑えていこう。まず第1回だけど、これはローマが勝ってシチリア島を獲得!これでシチリア島がローマ初の属州となります。以上!

 

生徒:属州ってなんですか??

 

しま:属州ってのは、イタリア半島以外の領土のこと!さて、負けたカルタゴ軍ですが…このままでは終われない。

 

生徒:おっ!第2回の開幕ですね!!!

 

しま:第2回は、別名ハンニバル戦争とも言われる。ハンニバルってのはカルタゴの将軍。こいつがすげーんすよ。

 

生徒:すげーって言っても、ローマにシチリア島取られてるんですよね?それってもう制海権を握られたようなもんじゃないっすか!もう海から攻撃しても、ローマを倒すの無理じゃないですか??

 

しま:その通り。“海から”攻撃するのは絶対に無理だ。

 

生徒:…はっ!わかった!イタリア半島の北からハンニバルは攻撃したんだ!

 

しま:いやいやwイタリア半島の北にはwアルプス山脈があるでしょww軍隊引き連れてアルプス山脈越えてくる奴www

 

生徒:そうっすよねwまさか、アルプス越えしてくるわけないっすよねwww

 

しま:と、ローマの誰もが思ってた。けど、ハンニバルはそれをやったんだ。しかも37頭の象を引き連れて。

 

生徒:象!?なぜ象!Why elephant

 

しま:このハンニバル軍の奇襲作戦によって、ローマは大敗を喫します。これが前216年カンネーの戦い。“カンネー”の戦いで、ローマはハンニバルに“かんねん”したというわけです(笑)

 

生徒:つまらな……いや、先生おもしろいです!最高です!

 

しま:ありがと!大好き大好き、大スキピオ!ってわけで、ローマの劣勢を逆転したのが大スキピオです!大スキピオは一か八か、ローマの守備をがら空きにして、直接カルタゴを攻撃します!

 

生徒:大スキピオってなんかかわいいですね。「大好き、ぴお♡」みたいな。

 

しま:図表で顔見てごらん?一生忘れられない顔してるよ。さて、今度は大スキピオハンニバルを倒します!これが前202年のザマの戦い!これでローマはカルタゴの本国以外の領土を全て手に入れます。ザマだけにざまぁ見ろ!って感じですね!(笑)

 

生徒:…あれ?でもまだ第3回があるんですよね?

 

しま:そう!さすがカルタゴ海上貿易ですぐに復興するんです!そのカルタゴを徹底的に破壊したのが第3回のポエニ戦争!ローマの指揮官は大スキピオの孫の小スキピオです。ローマはカルタゴの土地に海水をまいて作物が育たないようにしました。

 

生徒:なるほど…。これで地中海世界を征服!ローマは栄光の時代が始まるわけですね!

 

しま:いや、それが、長引く戦争がローマの社会を大きく変質させることになったんだ…。

 

生徒:え?どういうことですか?

 

しま:戦争が長期化するってことは、兵士がなかなか家に帰れないってこと。で、兵士は普段は普通の農民だから、農地が耕せない状態が長く続くことになる。なんとか残ったじっちゃんやばっちゃんが農作業を頑張るところもあるんだけど…病気になったり、腰を痛めたりすればおしまいなわけです。結局、生活費を捻出するために土地を売っちゃう。兵士がやっとこさ戦争から帰ってくると「…あれ?俺の土地無い!農業できない!」となるわけ。

 

生徒:手放された土地は誰が買うんですか?

 

しま:そりゃもちろん貴族ですよ!貴族が大土地所有者となり、農場経営を行うんです!

 

生徒:あ、良かった。じゃあ、農民はそこで働かせてもらえるんですね。

 

しま:違う。農民はもう必要ないんだ。だって、征服した土地からいくらでも激安の奴隷が運ばれてくるからね。ロクに食事を与えない。額には焼きゴテで所有者の名前が捺してある。ヒドイもんでしょ。

 

生徒:えっと…まとめると、大土地所有者である貴族が奴隷を使役して、農業経営を行ってる…ってことですよね?

 

しま:そう。この仕組みをラティフンディアと言います。日本語だと大土地所有制とか、大農場経営って訳されるね。

 

生徒:ところで何を栽培してたんですか?やっぱり穀物??

 

しま:いや、穀物シチリア島からタダ同然で運ばれてくるから作る必要は無い。ってわけで、海外に輸出するための商品作物をつくります!オリーヴとかぶどうとかの果樹栽培がメインでした!

 

生徒:では…没落した農民はどうなっちゃったんですか?

 

しま:彼らは家族ごと、ローマ市にやってくる。ローマ市にやってくれば、有力貴族がそれなりに面倒を見てくれるんですよ。なんたって没落しても”市民”は”市民”だからね。彼らは選挙権を持っているんだ。だからパンをあげたり、娯楽を提供したりして、操ろうとする。これ「パンとサーカス」と言います。パンはパンでサーカスが娯楽ね。

 

生徒:貴族からすればギブアンドテイクな関係…ってわけか。あれ?でも市民が無産化しちゃうってことは、重装歩兵が居なくなっちゃうってことですよね?それって困りませんか?兵力が減ってローマが弱くなっちゃいません?

 

しま:まさにそこが次回のテーマです!