読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.9(西)内乱の一世紀①

しま:さて、ポエニ戦争によって地中海世界へ領土を拡大したローマですが、長期化した戦争は農民の没落、それに伴う軍事力の低下を招きました。ローマはこのままでいいのか!と、心ある政治家たちは考えた。そして行動した!

 

生徒:おぉ!かっこいい!

 

しま:最初の改革は、前133グラックス兄弟によるものでした。このグラックス兄弟、ローマの名門貴族出身の若者。最初に改革を試みたのは兄グラックス。彼の政策はざっくり言うと「無産市民に土地を与えて、自作農に戻そうじゃないか!」というものです。

 

生徒:…あれ?ってか今気付いたんですけど、今のローマの状況って、前367年に制定されたリキニウス・セクスティウス法と矛盾していませんか?大土地所有は、この法律によって制限されたはずですよね…?

 

しま:そうなんだよ!制限されている以上の土地を占有している貴族が居るんです!だからその土地を無産市民に再分配しようというのが兄グラックスの主張です!筋が通っているね。

 

生徒:素晴らしいと思います!でも…せっかく土地をGETした貴族たちからしてみれば迷惑…ですよね?

 

しま:そう。兄グラックスは、反対派に襲われてしまいます。撲殺され、川に投げ込まれ、ぷかぷか浮いているところを発見されました…。

 

生徒:なんとむごたらしい…ってことは弟グラックスが兄の遺志を引き継いで改革を断行していくわけですね!

 

しま:そう!…でも…弟グラックスも、混乱に巻き込まれ、最後は自殺してしまうんです。

 

生徒:なるほど…。グラックス兄弟の改革は、失敗に終わったということですね。

 

しま:続いて現れた改革者はコンスルのマリウス。さて、ここまでの話を整理すると、ローマ軍の弱体化をなんとか食い止めなくちゃいけないんだけど、貴族は大土地所有を続けたがっているって感じ。マリウスは、これを一気に解決する方法を見つた。それが兵制改革だった。

 

生徒:どんな改革ですか!?

 

しま:ギリシアもそうだったけど、兵士は、財産を持った市民が武器を自弁してなるもの。あくまでも武器は自分で用意するものなんです。これが大前提。だから、グラックス兄弟は自作農を土地の再分配という方法で創出しようとした。だけど失敗した。これに対してマリウスは、発想を180度転換して考えるんだ。

 

 「武器が買えないなら、俺が買ってやるよ。」

 

ってね。

 

生徒:イケメン!!!

 

しま:というわけでマリウスは無産市民に武器を買い与えて兵士とし、彼らに給料を払うんです。もちろんその費用はマリウスのポケットマネー!こうすることで、兵士不足は一気に解決!しかも貴族は土地を失いません!マリウスはこの新しい軍隊で勝利を続けました。

 

生徒:つまり、兵士はローマのために戦うんじゃなくて、自分を雇ってくれたマリウスのために戦うようになったってことですね?

 

しま:そう!この変化をプリントでは「軍隊の私兵化」という言葉で表現している。のちに多くの野心家たちがマリウスのやり方を真似ます。そして、私兵を雇った将軍同士の内乱が続き、ローマは混乱の時代を迎えます。

 

生徒:それで「内乱の一世紀」なのか。

 

しま:それだけじゃない!前91年から前88年にかけては、イタリア半島内の同盟市がローマ市民権を求めてローマに反乱を起こします。これを同盟市戦争と言う。結局は、ローマ市民権をイタリア半島内の全自由民に与えることでこの戦争を終わらせました。

 

生徒:なんだかイタリア半島内が騒がしくなってきましたね。

 

しま:この頃、マリウスとスラという将軍同士の抗争が起こります。マリウスの支持基盤は平民会なので平民派と呼ばれ、スラのバックには大金持ちの元老院議員が付いているため閥族派と呼ばれました。結局最後は閥族派のスラが勝ちます!

 

生徒:ん?前73~前71年にかけて起きているスパルタクスの反乱と言うのは、奴隷の反乱か何かですか??

 

しま:鋭いね!これは剣奴の反乱だ!奴隷といってもいろいろな種類があって、剣奴というのは真剣勝負の殺し合いを見世物としてさせられる奴隷達のこと!負ければ待っているのは“死”です。恐ろしいですね。

 

生徒:なんで、そんなことするんですか?

 

しま:人気集めですよ。こうした見世物(サーカス)を平民に提供することで、貴族は好感度を上げて、選挙で投票してもらおうという魂胆です。さて、大勢力となったスパルタクス率いる奴隷反乱軍はイタリア半島を北上します。目的は故郷へ帰ることでした。

 

生徒:でも…結局捕まっちゃうんですよね…また剣奴へ逆戻りですか??

 

しま:スパルタクス自身は戦死してしまいました…。生き残って捕えられた奴隷達はどうなったかと言うと…磔(はりつけ)にされたんです。ローマ市から南に続くアッピア街道の両側には十字架が何キロも並べられ、その両側に…。

 

生徒:切ない話ですね。

 

しま:この時期のローマは、将軍同士の内乱だったり、同盟市や奴隷の反乱だったり、混乱が続いていたんです。こうした社会混乱を鎮めるには、強力な指導者が必要になってくるんですよ。

 

生徒:おっ。さてはそろそろ独裁者の登場ですね…

 

しま:いや、あくまでローマは“独裁者アレルギー”だから。皇帝の登場はもう少し先だよ!