読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.21(西)十字軍とその影響①

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しま:今回は十字軍ですよ!

 

生徒:十字軍!キリスト教徒の戦いですね!

 

しま:まずは十字軍の背景から勉強していこう!11世紀以降、三圃制や鉄製重量有輪犂などの農業の進歩によって収穫量が増大し、人口が増加しています。西欧のなかで蓄えられたエネルギーは、やがて外の世界へと向かっていく。一つ目はイスラーム世界へ、これが十字軍ね。二つ目は東ヨーロッパへ、これが東方植民。三つ目はイベリア半島へ、これがレコンキスタ(国土回復運動)ですわ。

 

生徒:なるほど。封建社会が安定したところで、十字軍はスタートしたんですね!

 

しま:当時、宗教的情熱の高揚に伴い、聖地巡礼ブームが起きていたことも一つの要因です。具体的な巡礼地は、イェルサレム、ローマ、そしてスペインのサンチアゴ゠デ゠コンンポステラ。ここはスペインに布教したヤコブの墓があるんだ。

 

生徒:イェルサレムと言えばユダヤ教キリスト教イスラーム教の共通の聖地ですよね?

 

しま:その通り。で、ここは当時イスラーム支配下にありました。熱心なキリスト教徒はヨーロッパから巡礼に出かけていたんです。ところが、セルジューク朝支配下に入ってからは巡礼が妨害されている…。これが十字軍呼びかけの背景の一つでした。

 

生徒:直接的な契機は?

 

しま:セルジューク朝小アジアに勢力を伸ばしてきて領土を奪われたビザンツ帝国の皇帝アレクシオス1世が、ローマ教皇に救援を要請したことです。救援依頼を受けた教皇はウルバヌス2世。ちょうどグレゴリウス7世の叙任権闘争教皇権が強まっていた頃だね。1095年、ウルバヌス2世はクレルモン宗教会議に集まったヨーロッパ各地の諸侯たちに“ビザンツ救援”と“聖地イェルサレム回復”のための遠征軍を呼びかけます。宗教的熱狂が高まる中、こうして十字軍が始まります!

 

生徒:あれ?でもこの時って、東西教会は分裂してますよね?

 

しま:しています。東西教会の分裂は1054年だからね。だから、ウルバヌス2世の意図としては、これを機会にもう一度キリスト教会を統一しようってわけ。

 

生徒:なるほど!そんな思惑もあったんですね!

 

しま:まぁ結局は叶わなかったけどね。では、みていきましょう!まず第1回十字軍。主力はドイツやフランスの諸侯。みごとイェルサレムの回復に成功します!十字軍はここにイェルサレム王国を建設し、諸侯のひとりを王に推戴しました。

 

生徒:幸先良いですね。

 

しま:イェルサレム王国を建てた十字軍ですが、国を維持するために物資の補給を担当したのはイタリアの商人たちでした。ジェノヴァヴェネツィアといった商業都市がイタリアにあって、輸送を担当し大儲け。しかし、やがてこのイタリア商人たちが十字軍の主導権を握っておかしな方向へと進むことになるので要注意…。さて、イスラーム側も反撃開始です。イェルサレム王国からじわじわと領土を奪い始めます。これに対して、第2回十字軍が行われる。けど失敗。“第2回は救援失敗”とだけ覚えておきましょう。その後もイェルサレム王国の領土縮小は続きます。エジプトでアイユーブ朝を建てたサラディン(サラーフ゠アッディーン)に、とうとうイェルサレムを奪い返されてしまいました。これに対して行われたのが第3回十字軍。神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世、仏王フィリップ2世、英王リチャード1世という超豪華メンバーの共演です。しかし、フリードリヒ1世は川を渡る際、馬から落ちてそのまま溺死。残る2人は仲が悪くてケンカばかり。とうとうフィリップ2世は帰っちゃいました。

 

生徒:最後はリチャード1世が単独でサラディンと戦ったんですね。

 

しま:そう。でも、イェルサレムを奪うことはできない。この時のサラディンの態度は、十字軍の残虐ぶりとは正反対で超寛大。リチャード1世が胸を張って帰国できるようにメンツを立ててあげるんです。そのメンツとは“キリスト教徒の聖地巡礼を認める”ということでした。

 

生徒:すごい!サラディン男前や!

 

しま:第4回は、教皇権の絶頂期であるインノケンティウス3世の提唱で行われるんだけど…これがおかしな十字軍なんです。“方向転換十字軍”なんて呼ばれることもある。

 

生徒:ん?イェルサレムへ行かなかった、ということですか?

 

しま:兵士たちはもともと海路で遠征するつもりでヴェネツィアに集結しました。ところが、お金がなくて船賃が払えない。ヴェネツィア商人たちにとっては宗教的情熱よりも商売が大事だから、金を払わない客は運びません。結局船賃代わりに十字軍兵士はヴェネツィアの商売敵であったコンスタンティノープルを攻撃させられるんです。救援を要請してきたビザンツ帝国を攻めてしまうというのは本末転倒。しかもコンスタンティノープルの攻略に成功して、ここにラテン帝国という国まで建ててしまうんです。これで、一時ビザンツ帝国亡命政権を作ることになりますが、やがてそのニケーア帝国がラテン帝国を滅ぼし、ビザンツ帝国を復活させます。

 

生徒:亡命政権だなんて、おかしな話ですね。

 

しま:第5回は、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世が行います。この皇帝はシチリア島出身で、国際的な教養を身に付けていた異色の人。軍隊を率いて現地まで行くけど、一度もイスラーム勢力と戦わずに、なんと外交交渉だけでイェルサレムを手に入れて帰ってきます。“無血十字軍”とも言います。とりあえず、今回はここまで!