読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.3(西)アテネとスパルタ

しま:よっしゃー!!!今日からまた気合入れていくぞーーー!おら!さっさと席につけ!早く!…おい何してんだよ!早く席に着け!さっさとペンを持てよ!ってか持っとけよ!ペン!ペンペン!早く!ペン!…あーもう遅い!決断力・判断力・行動力!全部遅すぎるって!…今、2秒損したぞ!2秒!…………なんだお前…今たった2秒くらいでうるせぇな…って顔したのか?おい!いいか、もしお前が蝉だった時のこと考えろ?お前が蝉だったらその2秒が命取りになってんだぞ!蝉の気持ち考えろ!良いか、蝉になれよ!蝉になるんだよ!!!ほら!ミーーーンミン!!!ミンミーーーン!!!

 

生徒:先生!どうしたんですか!?やかましいですよ!狂気!

 

しま:いや、今日はアテネと並んでギリシアの代表的なポリスとして知られる“スパルタ”について勉強していくから、ためしに“スパルタ教育”を実践してみようと思ったんだけどね…なんかうまくできなかったよ。慣れないことはするもんじゃないね。

 

生徒:あ、そういうことですか。いや、全然わからなかったです。ってか最後の方「蝉になれよ、ミーンミン」って言ってましたよ。

 

しま:やめてよ、恥ずかしい。

 

生徒:で、先生。スパルタ教育の話ですよね??

 

しま:あ、そうそう。スパルタ人はね、強く勇ましい戦士にするため、生まれるや否や、身体が丈夫な子だけが育てられるんだ。戦場では仲間との信頼関係が大事だから、集団での共同生活が基本で「夕食は兵士みんなで食べましょう!」なんて義務もあったんだよ。

 

生徒:へー…あ、女性の場合はどうなるんです??

 

しま:スパルタでは、女性も男性同様に格闘技の訓練を受けていたんだ。夫が戦いに出て居ない間、家族を守るのは女性だからね!

 

生徒:なるほど。でもなんでまた、そこまで強い戦士にこだわるんです??

 

しま:それは、スパルタの社会構成を見れば一目瞭然!少数のスパルタ市民がその20倍ものヘイロータイを支配していることがわかる。彼らの反乱を防ぐためには、力強い戦士が必要だったんだ。

 

生徒:先生…手元に資料集がありません…もう少し詳しくお願いします!

 

しま:スパルタの社会構成は3段階に分けられるんだ。一番上が完全市民でスパルティアタイ。彼らは戦士であり政治も担っていた。その次が周辺民のペリオイコイ。彼らに参政権はないけど兵士として徴用された。そして一番下が隷属農民のヘイロータイです。彼らは征服された先住民です。

 

生徒:それで厳しい軍国主義をとっていたんですね!

 

しま:ちなみにこの軍国主義、スパルタの伝説上の立法者にちなんでリュクルゴスの制と呼ばれている。その一環として鎖国政策をとっていたってのもスパルタの特徴だよ。

 

生徒:鎖国!?なんでそんなことするんですか??

 

しま:貿易をして利益が発生すれば、貧富の差が生まれてくるでしょ?市民間の貧富の差は、軍隊の規律の乱れに繋がる。だから徹底して平等主義を貫くんだ!貨幣の使用は禁止だし、土地の売買も禁止です!

 

生徒:アテネ鎖国してたんですか??

 

しま:いや、アテネは山がちな土地だから、もし鎖国なんてしたら、自分で自分を兵糧攻めするようなもの。幸い、ラウレイオン銀山を所有していたから、良質な銀は採掘されていたけど、とにかく穀物は輸入しなければやっていけなかったんだよ。

 

生徒:なるほど。つまりスパルタは鎖国していて農業が中心だったのに対し、アテネは商工業や貿易が中心だった…ってことですね!

 

しま:そういうこと。ちなみに言い忘れてたけどアテネイオニア人がつくったポリスで、スパルタはドーリア人がつくったポリスね。イオニア人ドーリア人もどっちもギリシア人だよ。

 

生徒:で、先生!そんなアテネとスパルタは、どっちの方が強かったんですか?

 

しま:んー…どっちが強い!とは言い切れない。それぞれ戦い方も全然違うしね。例えばアテネは海軍が強かったし、スパルタは陸軍が強い。比較して覚えましょう。さて、次はポリスの構成員について見ておこう!ポリスの住民は大きく“市民”と“奴隷”に分けられる。そして市民はさらに貴族と平民に分けられるんだ。貴族は、重装騎兵として国防の主力を担い、政治を独占している。平民は、そんな貴族に従属しているわけではなく私有地を持っているので、市民同士の関係は平等だったと言われる。あと、古代ギリシアってのは奴隷社会だからね、市民のほとんどが奴隷を所有していて、畑仕事なんかは奴隷にやらせていた。奴隷は売買の対象で、人格は否定。ただし、頭がいい奴隷や字がきれいな奴隷が居れば、家庭教師や医療行為、文書の転写なんかを任せていたことも知っておこう!

 

生徒:あ、先生。さっきのスパルタの陸軍で思い出したんですけど、『300』って映画ありましたよね??あれってスパルタ軍の話じゃなかったです?

 

しま:そうそう!あの映画を観るとね、当時のギリシア人たちがどうやって戦っていたのかが良く分かる!

 

生徒:え?どうやってって…そんなもん相手に向かっていっせいにわーーーって走っていってばんばん斬っていくんじゃないんですか??

 

しま:さっき、仲間との信頼関係が大事!って言ったでしょ!?ギリシアの歩兵ってのは、ぎゅぎゅっと密集して隊列を組んで戦うんだ。その名もファランクス!!!

 

生徒:あ、本当だ!兵士同士が密着してる!

 

しま:でしょ!?これよく見ると、左手に大きな楯、右手に長槍を持っていることがわかる。これが重装歩兵。戦う時は、左手に持った楯で、自分の左半身と左隣の人の右半身を守りながら構えて、その楯の隙間から槍を突き出すようにして進むんだ!

 

生徒:へぇ…そりゃ相当な訓練と強固な連帯感が必要になるわけだ…。

 

しま:ちなみに、こっからは完全な余談になっちゃうんだけど、さっきのファランクスの説明を聞いて、弱点があることに気付いた?

 

生徒:え?弱点ですか??体は楯で守ってるわけですよね?…左手に楯を持ってガードして…横にも同じような人が居て、自分の右半身を守ってくれている………あっ!!!一番右の人は、自分の右半身をガードできない!

 

しま:そうなんだよ!この隊列だと、右端の人が弱点になるんだ。

 

生徒:じゃあ誰もそこはやりたがらないですね…

 

しま:ところがその逆で、みんなここをやりたがるのです。なぜならそこはとっても名誉なポジションだから。生き残れば「俺はあの戦いの時一番右端の先頭に居たんだぜ!」なんて自慢ができるわけです!

 

生徒:確かにかっこいいですね!戦うことを誇りに思っていたのかなぁ。