読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.6(西)ヘレニズム時代

しま:今日のテーマは「ヘレニズム時代」です。“ヘレニズム”とはドイツの歴史家ドロイゼンの造った言葉で“ギリシア風”という意味。

 

生徒:もしかして、ギリシア人が自分たちのことを「ヘレネス」って呼んでいたのと関係あります?

 

しま:あります!ちなみに異民族のことはバルバロイって呼んでたよね!オリエント世界にこれからギリシアの“風”が吹き込んでくる時代…それがヘレニズムです!というわけで、今日は一人の人生を追っていくよ!その名もアレクサンドロス大王だ!

 

生徒:あ、なんか聞いたことあります!

 

しま:では、前回の話に戻るけど、アテネとテーベの連合軍が、北方のマケドニアによって破られた戦いはなんだった?

 

生徒:カイロネイアの戦い[前338年]です!

 

しま:そうだね!ギリシア諸ポリスが、指導権争いで内輪もめしている中、いつの間にか北方のマケドニアが強大化していたんだ!で、マケドニアを強大化させたのが国王フィリッポス2世という人物!今日の主役であるアレクサンドロス大王のお父さんだよ!

 

生徒:負けちゃったギリシア諸ポリスは、同盟を結ばされるんでしたよね。コリントス(=ヘラス)同盟。

 

しま:そう!これは、フィリッポス2世率いるマケドニアが、アケメネス朝へ侵攻するための下準備だと捉えられるね!

 

生徒:なるほど!じゃあこれで、心置きなくアケメネス朝に進撃できますね!

 

しま:と、思った矢先。なんとフィリッポス2世は暗殺される。

 

生徒:なんと!!!

 

しま:そして、新しくマケドニア王となったのがフィリッポス2世の息子、アレクサンドロス大王!即位した時、なんとハタチ。

 

生徒:若い!!!

 

しま:彼は、子どもの頃からアリストテレスのもとでギリシア的な教養を学んでいました。そして、父親の連戦連勝の知らせを聞くたびに

 

「おいおい…俺のやることが無くなっちまうぜ…おやじ…。」

 

と嘆いていたらしい。

 

生徒:血気盛んな!

 

しま:さて、父の遺志を受け継ぎアレクサンドロスは満を持して“東方遠征”[前334~前324年]を開始します!出発地はマケドニアの都、ペラ!ペラ!ペラ!ペラ!

 

生徒:ペラペラペラペラ…うっせぇな。はい!つまり、この東方遠征開始の前334年から、同時にヘレニズム時代も開始!というわけですね!

 

しま:その通り!ギリシアの風がいよいよ吹き始めたわけです!さて、アレクサンドロス率いるギリシア軍がアケメネス朝と最初に衝突したのが前333年イッソスの戦い!この時のペルシア王が誰だったかは…覚えてるよね?

 

生徒:簡単です。ダレイオス1世です。

 

しま:ちがう!ダレイオス1世はペルシア戦争の時の王でしょ!?今はダレイオス3世!

 

生徒:あ、そっか。3世か。うっかり。

 

しま:で、イッソスの戦いではダレイオス3世が負け、逃げます!アレクサンドロス大王、その後を追わずに、一旦エジプトへ。

 

生徒:え!なんでです!?

 

しま:彼はエジプトのファラオのような強大な王権を理想としていたんだよね。だから、アケメネス朝を征服する前に、エジプトをペルシアから解放することで、自らにオリエント風専制君主としての箔を付けたかったんだね!

 

生徒:なるほど。彼はファラオになったのか。

 

しま:そして前331年、アルベラ(ガウガメラ)の戦いでダレイオス3世を破ります!敗れたアケメネス朝は前330年に滅亡。さんさんと燃えるペルセポリス。しかし、大王の東方遠征はまだまだ終わらない!!!

 

生徒:おぉ!このままどんどん東へ進んでいくわけですね!もしかして、日本まで来ちゃうんじゃないですか!?

 

しま:ところが前326年、インダス川を渡ってインドへ侵入したところで、部下が一言…

  

「そろそろ故郷へ帰りたいなぁ…」

 

生徒:なんと!…でも…マケドニアを出発してもう8年ですもんね。ふるさとが恋しくなるのも分かる気がします。

 

しま:ちなみに、アレクサンドロスがインドへ侵入したことによって、インドにはマウリヤ朝という、初の統一王朝が生まれている。頭の片隅に残しておこう。

 

生徒:はい!それでこの後、大王はどうするんですか!?

 

しま:アラビア遠征を計画中、バビロンで急死。まさに突然の死。

 

生徒:えぇ!!!こんだけ広い領土を手に入れてたのに死んじゃったんですか!?じゃあ、この領土はどうなっちゃうんですか!?彼の遺言は!?

 

 

「最強の者が帝国を継承せよ」

 

 

生徒:…それが遺言ですか…?そんな曖昧なこと言ったらギリシア神話の神々みたいに揉めちゃいますよ!

 

しま:まさにその通り。大王の死後、すぐにディアドコイ(後継者)戦争が起きてしまうんだ。特に大きな戦いが前301年のイプソスの戦い。よく、イプソスとイッソスを間違えちゃう人が居るから気を付けよう。で、この戦いによって、帝国の分裂は確定。大きく3つだ。マケドニアにはアンティゴノス朝マケドニア[前276~前168年]、アジアはセレウコス朝シリア[前312~前63年]、エジプトにはプトレマイオス朝エジプト[前304~前30年]。この、プトレマイオス朝がなくなる前30年をもって、ヘレニズム時代も終了。

 

生徒:あ!それで確かセレウコス朝からはパルティアとかバクトリアが自立してくるんでしたよね!これでようやく「東洋史No.7~パルティアとササン朝~」のところと繋がったわけか!

 

しま:その通り!よっしゃ、じゃあ最後にアレクサンドロス大王の「東西融合政策」についてまとめて終わりにしよう!

 

生徒:東西融合?ってことは征服した先のペルシア人たちと深く関わったんですか?

 

しま:彼はギリシア人男性1万人とペルシア人女性1万人の集団結婚式を行ったし、自らもダレイオス3世の娘と結婚しているんだ!

 

生徒:すごいっすね!言葉はどうしたんですか??

 

しま:ギリシア語のコイネーを共通語として使用した!ついでに貨幣はアッティカ貨幣で統一した!

 

生徒:ん?資料集に載ってるアレクサンドリアってなんですか?

 

しま:アレクサンドロスが征服した各地に建設したまちのこと!70ヶ所くらいあるんだけど…特に有名なのはエジプトのアレクサンドリアだね!プトレマイオス朝の都になり、政治・経済・文化の中心として繁栄した!王立研究所のムセイオンも創設されたんだけど…はい、クイズ!博物館のこと、英語でなんというでしょう!

 

生徒:え!?えっと…ミュージアム

 

しま:ミュージアムの語源が、まさにこのムセイオンなんです!ちなみにムセイオン館長の名前はエラトステネス。地球の周囲の長さを計算した人だよ。