読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.13(発展)イスラームの誕生

しま:「インシャーアッラー。」

 

生徒:ん?どういう意味ですか?

 

しま:“神のみぞ知る”ってこと!例えばこんな時に使うよ

 

「それじゃ、明日は10時に駅前集合ねー!絶対に遅れないでねー!インシャーアッラー!」

 

生徒:…すると、どうなるんです?

 

しま:10時に来るかは“神のみぞ知る”…つまり、あぁ多少遅れても仕方ないよね!ってこと。

 

生徒:はっ!神の名のもとに遅刻が正当化されてる!

 

しま:ね!覚えておいて損はないでしょ!?というわけで、今日からイスラームです!まずは、6世紀から7世紀にかけてのシルクロードの衰退から追っていくことにしよう!ちょうどこの頃ビザンツ帝国ササン朝ペルシアがシルクロード上でケンカをしていた!道の真ん中でケンカをしているのに、そこにわざわざ割って入って通ろうとする人なんていないよね?

 

生徒:ですね!迂回します!

 

しま:その迂回ルートが、まさにアラビア半島ヒジャーズ地方だったわけ!隊商貿易はどんどん活性化して、メッカやメディナというオアシス都市が繁栄するんだ!

 

生徒:いいですね!砂漠でラクダが大活躍!

 

しま:ただね、繁栄するということは、一方で貧富の差が生まれるということでもある。その貧富の差をどうにかしたい!みんなで平等な社会を実現したい!そういった発想を持って登場してきたのが、名門クライシュ族ハーシム家出身のムハンマドなんです!

 

生徒:聞いたことあります!予言者ですよね!

 

しま:おーっと!漢字が違うよ!予言者じゃなくて預言者。神の言葉を預かる人だ。神というのはアラビア語アッラー。これは名前では無く、神そのもの。ムハンマドはもともと商人で、隊商活動を行っていたから、キリスト教徒やユダヤ教徒と触れる機会が多かったんだ。そのたびに「あー…一神教の人たちの団結力って素晴らしいなー。」なんて思ってたりしてたわけ。

 

生徒:ってことは、ムハンマドにとってキリスト教徒やユダヤ教徒というのは、尊敬すべき人たちなんですね!

 

しま:もちろん!だから、彼らのことを“啓典の民”と呼び、庇護者(=ジンミー)と言ったんだよ。守られるべき存在だって!

 

生徒:なるほど!

 

しま:そしてムハンマドは、啓典の民と同じように一神教を創り出した。ある日突然、神から「読め!!!」と言われる。その時口から出てきた言葉が『クルアーン』の内容だ。それまでは、みんなが好き勝手に自分の思う神々を崇拝して、偶像をつくり、黒い立方体(=カーバ)の建物に投げ入れて拝んでいた。でも、それを辞めさせたんだ。

 

生徒:やりたいことは分かるんですが、イスラーム教も、生まれた当初は新興宗教なわけで、すぐには受け入れられないと思います…

 

しま:その通り。いきなり「俺は神の声をきいたぞ!」と言っても、信じてもらうには時間がかかる。ムハンマドは当初、信頼のおける部下たちを連れ、メッカからメディナへ“聖なる遷都”をすることになる。これを聖遷(=ヒジュラ)と言い、この年がイスラーム暦の元年になっている!西暦だと622年だね!

 

生徒:“聖遷”と言うと聞こえがいいですけど、つまりは迫害を逃れた…ということなんですね。

 

しま:これによって、イスラームの共同体(=ウンマ)が形成されることになった。そして満を持して630年。彼はメッカに戻ってくると、カーバ聖殿をイスラーム教の聖殿にするんです。

 

生徒:ムハンマドってどんな顔してるんだろ。ちょっと資料集で見てみよーっと………ん?

 

しま:気付いたかな?ムハンマドは、偶像崇拝の対象となってしまわぬよう、描かれる際には顔に白い布がかけられるんだ。さ、今回はここまで!次回はイスラーム教の特色についてみていきましょう!