No.14(発展)イスラームの特色
しま:さて、今回はイスラームの特色をみていこう!
生徒:先生!そもそも“イスラーム”ってどういう意味?
しま:イスラームは、アラビア語で“神への絶対的服従”って意味だよ。
生徒:なるほどねー。そしたらまず、神について教えて!
しま:イスラーム教の特徴は、まず、一神教であること。しかも、その神は人格のある神で、太陽の神とか、そういう自然神とは違う。ちなみに、こういう一神教の宗教は世界で3つ。成立した順に、ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教の3つ。
生徒:つまり、イスラーム教はユダヤ教やキリスト教の兄弟宗教で、一神教三兄弟の末っ子ってことね!
しま:そういうこと!さて、イスラーム教の唯一神を「アッラー」というけれど、これは神様の名前じゃない。じゃあ、神様の名前は何かというと…あえて言えば「ヤハウェ」ね。
生徒:ってことは、ユダヤ教もキリスト教もイスラーム教も、それぞれ同じ神様を見ている…ということだね。
しま:そう。ただ、その視点が違ったり、見え方が違ったりするんだよね。ほら、イスラーム教でのムハンマドの位置づけって「最後にして最高の預言者」でしょ?ノアとかモーセとかイエスも預言者なんだけど、その最後の一人がムハンマド!ってわけ。
生徒:おいしいところに目を付けた!って感じだね!
しま:さて、そんな神がかり状態のムハンマドの言葉を集めたイスラーム教の啓典が『コーラン』です。最近はアラビア語で『クルアーン』と言うことも多い。これは、神の言葉をそのまんま!解釈抜きで!直接書き留めたもの!ムハンマドが喋ったんだけど、それはムハンマドの言葉ではないってところがポインね!ちなみに、ムハンマドの言行録や伝承は“ハディース”というので、こっちもあわせて覚えておこう!
生徒:…ってことは、日本語に訳されちゃった『コーラン』は、厳密には神の言葉じゃない…ってことか。
しま:そういうこと!よし、じゃあ後半は、イスラーム教徒の「六信五行(ろくしんごぎょう)」について見ていこう!「六信」とはムスリムが信じなければならない六つのことで、具体的には…
「神」
「天使」
「啓典」
「預言者」
「来世」
「予定」
この六つ。
生徒:「来世」とか「天使」とか、やっぱりユダヤ・キリストの影響を受けているのが分かる。
しま:「五行」はムスリムが行わなければならない(行うことが望まれる)五つのことで、具体的には…
「信仰告白」
「礼拝」
「喜捨」
「断食」
「巡礼」
の五つ。
生徒:聞いたことある!「アッラーの他に神はなし。ムハンマドはその使徒なり。」って唱えるのが「信仰告白」だよね!「礼拝」は、テレビで見たことあります。1日5回、メッカの方向に向かってやるって言ってた!
しま:じゃあ問題、そのメッカには何がある?
生徒:カーバ聖殿!
しま:正解。ただね、毎日礼拝を行うというのは、イスラーム教の国ならまだしも、日本だととっても大変だよね。例えば、クラスにムスリムの生徒がいて、授業中に礼拝を行うのはなかなか困難。だから、住んでいる地域によっては、省略しても構わないとか、けっこう柔軟にやっているみたい。
生徒:ふーん。あ、「断食」ってきつそう。
しま:1年に一ヶ月間、ラマダーンと呼ばれる断食月があるんだけど、食べたり飲んだりしちゃいけないのは、日の出から日没までの太陽の出ている時間帯!だから日が沈んだら、食べてOK。
生徒:太りそう…。でも、水も飲めないってのはかなり、しんどそう。ってか子どもとかお年寄りとか病人は大丈夫なん?
しま:特に暑い地域に暮らす人にとっては命にかかわるよね。でも、そういう時には飲んでもいいの。そのへんは柔軟に。
生徒:自分だけがダイエットしてて、好きなものが食べられないのは辛いけど、周りもみんなで同じで我慢していると、仲間意識というか…連帯感が芽生えてきそう。
しま:そうそう。日が沈む頃には、「くるぞくるぞ!」ってみんな思うわけよ。この時の開放感がたまらないらしい。みんなで食べ物を持ち寄って、夜はパーティだってさ。
生徒:お祭りみたい。あ、「喜捨」ってなーに?
しま:豊かな人が貧しい人に財産を分け与えることだよ。街中に寝転がっている人が居たら、手に持っていたその日のスーパーでの買い物袋を、そのままぜーんぶ渡しちゃうのがイスラーム教徒なんです。最後の「巡礼」だけど、これは、メッカに巡礼すること。ちなみにメッカは現在のサウジアラビアにあります。
生徒:他にも、イスラーム教の特徴って何かある?
しま:おさえておいて欲しいのは、聖職者とか教会組織が無いことかな?信者はすべて、神の前に平等なんです。だから、コーランに基づくイスラーム法(=シャリーア)を解釈する知識人(=ウラマー)が重要になってくる。あとは、アルコールは飲んじゃいけないとか、豚肉は食べちゃいけないとか、利子を取るのは禁止とか、男は4人まで妻帯可能とか…
生徒:あ!出た!それは女性蔑視じゃないですか!
しま:うーん…そう言われることもあるんだけど、もともとは女性を保護するための決まりだったんだ。むしろイスラーム教が生まれる以前のアラブ社会って、男は何人でも妻を持つことができたんだよ。それをムハンマドは4人までに制限した。しかも、「すべての妻を平等に愛せるならば」という条件も付けている。聖戦(=ジハード)をする中で、ムスリムの男性が戦死すると、未亡人が生まれてしまう。残った男たちに、彼女たちの生活の面倒を見させるために一夫多妻を認めた、というのが4人の妻を認めた理由みたいです。あと、公共の場では男女を一緒にしないのがイスラーム世界では一般的。小学校でも男子と女子の登校時間が違ったりする。
生徒:文化の違いって、おもしろいね、先生。
しま:いや、なんでずっとタメ口なん!
生徒:ばれてた。