読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.17(東)前漢

しま:さてさて、項羽と劉邦によって秦が滅んだのが前206年。前漢が建国されたのが前202年。つまり、4年間は項羽と劉邦のどっちが新たな皇帝になるか争っていたというわけ。その最終決戦を“垓下の戦い”と言う。勝ったのは農民出身の劉邦だ。ちなみに項羽の最期は“四面楚歌”という故事で有名です!

 

生徒:で、劉邦が建てたのが前漢[前202年~後8年]ですね!都は長安

 

しま:さて、高祖(=劉邦)は、それまでの西周と秦の地方行政制度をMIXします!それが郡国制!「近くは厳しい郡県制。遠くはおまかせ封建制。」と覚えてください!そんな、高祖ですが、白登山の戦いで匈奴冒頓単于(ぼくとつぜんう)という人に負けています。しかも捕虜になって身代金で解放…。

 

生徒:次に覚えなきゃいけないのは6代景帝ですか?

 

しま:そう!景帝は諸侯の領土を削減しようとした!そしたら諸侯が怒って反乱を起こした。これを呉楚七国の乱[前154年]と言います!

 

生徒:やっぱり「地方はおまかせ~」なんてやってると諸侯が自立してくるんですね。西周の時と同じやん!

 

しま:その通り!で、いよいよ7代武帝[前141~前87年]の登場です!いよいよ前漢の華ひらく~。この人の業績は入試頻出だよ!

 

生徒:内政と外征に分けておさえた方が良さそうですね!

 

しま:ではさっそく内政から。まず、郡国制をやめて、全土を郡県制にします!これは呉楚七国の乱がきっかけ!これで武帝による中央集権化が始まる。ただ、じゃあ中央に有能な人材が集中しているかっていうとそんなこともなくて、地方にも泥をかぶったジャガイモみたいに、才能があるけど埋もれてる人材がたくさんいるんです!そんな有能な人材を登用するための制度として「郷挙里選」という制度を始めます!

 

生徒:選挙…って字が入ってますね!投票して、地方で有能な人材を決めるってことですか?

 

しま:違うよ!選挙という言葉に惑わされない!郷挙里選は、地方長官が一推しする人物を中央へ推薦する制度のこと。だからのちのちワイロが横行してくる…。

 

生徒:はい先生!プリントにある「儒学の官学化」ってのも、中央集権化の一つですか?ほら、儒学って「目上の人を敬いましょう」って考え方があるから、それって皇帝としては都合が良いですよね?

 

しま:するどい!ただし、いきなり「儒学を国の学問にします!」なんて言っても、それを教える人が居ないと広まらない。というわけで、董仲舒(とうちゅうじょ)という人の献策によって儒学を教えるための役職が設けられます。それが“五経博士”!

 

生徒:なるほど。ここまで完璧です!残りの内政をお願いします!

 

しま:内政は、外征による財政難を克服するために行われたものが多い!具体的には、塩・鉄・酒などの生活必需品の政府による専売制。半両銭に代わる五銖銭の鋳造。均輸法・平準法の制定。

 

生徒:均輸法と平準法ってなんですか??

 

しま:理屈は簡単!中国は広いから、場所によって作物も豊作だったり不作だったりする。そんな時に政府がたくさんあるところへ出向き、安い値段で買い付けて、それを無いところへ運んで買った値段より高く売る。そうすると政府にお金が入るでしょ?これが均輸法。

 

生徒:じゃあ平準法は?

 

しま:それを時間軸に置き換えるだけ!たくさんある時に政府が買っておいて、無い時に売る。ね。簡単でしょ?

 

生徒:理屈は簡単ですけど、やるには相当な情報収集が必要ですよね。それだけ中央へ色んな情報が集まっていたってことだろうなぁ…。

 

しま:その通り。ってわけで内政はおしまい!次は外征!まず、前139年に張騫を遊牧民族である大月氏のもとへ派遣します!なんでか分かる?ヒントは地図!

 

生徒:地図…あ!わかった!匈奴を挟み撃ちにするために「一緒に闘おうよ!」って交渉しに行ったんじゃないですか!?

 

しま:正解!で、張騫は意気揚々と大月氏のもとへ向かう…んだけど………途中で匈奴に見つかって捕まる。

 

生徒:え!?バカなの!?なんで匈奴の中通っていくのさ。

 

しま:結局張騫は10年以上も匈奴の中で生活するんだ。奥さんももらうし、子どももできる。でも張騫が偉かったのは、10年経ったにも関わらず、

 

「そうだ。大月氏のところへ行かなきゃ。」

 

という任務を忘れなかったこと。だいぶ遅れたけど大月氏のもとへ向かいます。で、交渉の結果、断られます。

 

生徒:断られるんかい!まぁでも10年前のお願いですもん!武帝が生きているかも分からんし!

 

しま:仕方ないから張騫は武帝のもとへとトボトボ帰っていく…で、その途中に、匈奴に見つかって捕まっちゃう(2度目。)

 

生徒:いや、ほんとにバカなの!?むしろもうかわいい気がしてきた!…あれ?じゃあ、結局匈奴は討伐できなかったんですか?

 

しま:いや!匈奴は討伐したよ!張騫がなかなか戻ってこないから、武帝は新たに前129年に衛青と霍去病という人物を派遣している。その2人によって匈奴討伐です!

 

生徒:…張騫の行った意味…

 

しま:いや、意味はあったんだよ!張騫は長安へ戻ってくると、西域事情を武帝にいろいろ話すんだ。なんせ10年も暮らしていたんだからいろんな情報を得ている。その中に「大宛という場所に、足が速くて、血の汗を流す馬が居る。」という話があった。武帝はこの“汗血馬”を獲得するべく、大宛に李公利という人物を派遣するんだ!そして見事に獲得!ちなみに、武帝の死後、西域支配の拠点として、西域都護府というものが設置されました。

 

生徒:なんか今のところ西ばっかりですけど、他の方面は?

 

しま:前111年には、趙佗という人物によって秦の支配から独立して建国されていた南越国(広州~ヴェトナム北部)を征服しているし、前108年には衛満によって建国された衛氏朝鮮を征服している!あ、さっき言い忘れちゃったけど、武帝は征服した各地にそれぞれ「河西4郡」「南海9郡」「朝鮮4郡」という支配の拠点を置いているんだ。下にまとめておくね!

 

河西…武威(ぶい)・酒泉(しゅせん)・敦煌(とんこう)・張腋(ちょうえき)―“ボーイッシュ、トン子の懲役”

南海…南海郡・交趾(こうし)郡・日南郡

朝鮮…真番(しんばん)・臨屯(りんとん)・玄菟(げんと)・楽浪(らくろう)―“新歯のレントゲン撮るの楽だろう“

 

河西4郡は、敦煌だけはしっかり書けるようにしておこう。南海9郡は3つだけで大丈夫!ちなみに南海郡は今の広州で、日南郡が最南端。朝鮮4郡は圧倒的に楽浪郡が出るね。漢字も場所も今の名前も覚えておこう。

 

生徒:北朝鮮の首都、ピョンヤンですよね!ってか、これだけ外征していれば財政難にもなりますわな。

 

しま:そうそう。さっき言った均輸・平準法以外にも、お金で罪を許してしまう金銭免罪や、役職を金で売っちゃう売位売官なんかが横行し始めるんだ。こうした政府の悪政に対し、新たな層が台頭してくる…例えば外戚外戚ってのは、皇帝の母方の一族のこと。一方で地方でも、飢饉や重税で農民が苦しんでいる中、土地をもった豪族が台頭してくる。皇帝は勢力を削減するべく限田策を発布しようとするも失敗に終わる…。さぁ、前漢はどうなってしまうのか…!

 

生徒:いや、絶対滅びるやん。