読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.14(東)夏・殷・周・東周(春秋・戦国)

しま:さて、これから勉強していく内容は、前漢の<武帝>の時代に<司馬遷>が書き残した『史記』という歴史書がもとになっているんだけど、『史記』の中では、神話伝説時代の8人を理想の君主として挙げていて、これを“三皇五帝”と呼ぶんです。歴代の中国の君主は、この三皇五帝を理想としている。さて、中国史では君主のことをなんていいますか?

 

生徒:えっと…“皇帝”…ですか?

 

しま:そう皇帝!“三皇五帝”から数字を取り除いて“皇帝”です!三皇の方は出ないけど、後ろの五帝はたまーーーに出るから一応教えとく!五帝の1人目が黄帝!4人目が暦づくりで有名な堯(ぎょう)、そして5人目が舜(しゅん)。おわり。

 

生徒:いよいよ王朝の誕生ですね!

 

しま:最初は夏王朝!時代は前2000年頃から前1600年頃。これ、実際にあったか分かっていません。都もどこかわからない。建国したのは禹(う)という人物。らしい。

 

生徒:伝説じゃなくて、存在が証明されている最初の王朝はなんですか?

 

しま:殷王朝です!時代は前16世紀から前11世紀!都は商!建国者は湯王です。

 

生徒:殷は“邑制国家”って書いてありますけど、邑制国家ってなんですか??

 

しま:もともと、黄河文明の後半くらいから“邑”という都市国家ができ始めるんです。で、ちっちゃい邑(小邑)は、大きな邑(大邑)の支配を受けるようになる。こういうのを邑制国家と言う。最初の夏王朝は、大邑の商を中心に栄えたんです!殷は都が決まらないで、最初は中原を転々としていたらしい。そしてようやく落ち着いたのが殷墟。これ、殷の都の跡地ってことで、都の名前は商だからね。河南省安陽市にあります!

 

生徒:殷墟の“墟”って漢字、難しいですね!

 

しま:さて、殷では甲骨を焼いて神意を占い、それに基づいて政治を行っていました。神権政治ですね。亀の甲羅をあぶるんですよ。んで、その亀裂を見る。「ややっ!今年は川が氾濫する恐れがあるからダムをつくれだと!?」みたいな感じね。で、こういう占いの結果を記録するための文字が甲骨文字なんです。でも、これ、壊れやすいですよ。というわけでしっかり残したい文字は青銅器に刻みます。これを金文と言う。鉄はありません。最後に…子安貝です。美味しいですよね。食べたことありますか!?

 

生徒:えっと…うちでは、味噌汁に入れてよく食べます!

 

しま:子安貝は食べれませんよ。これ、貨幣です。貝の貨幣で”貝貨”!ほら、今でも“購入”とか“賠償”とか、お金に関する漢字には貝が使われているでしょ?で、この子安貝ベトナムで取れる貝なんです。つまり、この当時から南海交易が盛んだったというわけ!よく試験で「殷は鎖国していた!」なんて誤文が出されるけど、引っかからないようにね。

 

生徒:かい!わかいました!

 

しま:さて、ここでクイズ。貨幣を使って物の取引をすること、貨幣を使って物の取引をする人…なんていう?

 

生徒:えっと…商業に…商人………はっ!!!商って漢字が使われている!

 

しま:そう!“商”は交易を盛んに行っていた殷王朝の都。ここから名前がついてるんだよ。中国ってすごいだろ?

 

生徒:はい!賢くなった気分です!

 

しま:それは気のせいですね。さ、殷の最後の王が紂王(ちゅうおう)なんだけど…こいつがひどい。自分の宮殿の池に水を入れないで、お酒を入れちゃう。で、おなかが空いた時のために木に肉をぶらさげちゃう。お酒の池に肉の林。こういう贅沢三昧のことをなんていう?

 

生徒:…酒池肉林だ!

 

しま:その通り!で、この紂王を倒したのが周という国の武王(ぶおう)だ。前の王がダメダメだったら天命に従って交代しちゃっていいんだったね?これが授業で説明した“易姓革命”の“放伐”パターン!

 

生徒:王朝が交替したんですね!殷が終わって周のはじまり!

 

しま:周は紀元前770年に西から東に都を移します。移動前を西周、移動後を東周と言う。さらに東周も紀元前403年で前後に分かれていて、前半を春秋時代、後半を戦国時代と呼ぶ!ちなみに『春秋』っていうのは孔子の出身地である魯の歴史書で、戦国っていうのは『戦国策』というこの時代に活躍した縦横家の人たちの考えをまとめた本のこと!詳しくは諸子百家のところで!

 

生徒:周の全体像は掴めました!さっそく中身を教えてください!

 

しま:よし!まずは西周[前11世紀~前771年]。都は鎬京。渭水盆地がよく氾濫してくれるから、ここは緑が広がっている。さて、ここで絶対おさえて欲しい制度がある!それが封建制度

 

生徒:中世ヨーロッパの契約に基づく封建制度とは違うんですか??

 

しま:違うんだ!よし、分かりやすく説明しよう!まずはこの教室を周だと思え!先生が周王だ。みんなは諸侯。諸侯は王からそれぞれの土地の支配を任されている。みんなはそれぞれ消しゴムやペンを持っていると思うけど、それはみんなの家臣だ。家臣は身分に応じて卿・大夫・士(けい・たいふ・し)と呼ばれる。そしてみんなが使っている机は俺が貸してやったものだ。それを封土という。さらにみんなが消しゴムやペンに貸してる土地も封土だ。みんなは、土地を借りているんだから俺にちゃんと貢納しなきゃならない。そして、万が一先生が誰かに襲われたら、みんなは俺を助ける義務がある。これが軍役だ。

 

生徒:えっと…王と諸侯、それと諸侯と家臣の間には、封土と引き換えに軍役と貢納の義務がある…ってことですか?

 

しま:その通り!で、この王と諸侯っていうのは全部血が繋がってるんだよ。この血縁関係を宗族という。共通の祖先から枝分かれしたと信じている集団だ。で、宗族の中には決まり事があって、これを宗法と呼ぶ!

 

生徒:なるほど。中世ヨーロッパと違って、中国の封建制度は血縁関係に基づいた世襲制なんですね!

 

しま:そういうこと!地方は諸侯に“おまかせ統治”なんです。これが中国の封建制度

 

生徒:封建制度は“おまかせ統治”なんですね!

 

しま:あともう1つ、井田(せいでん)法っていうおもしろい土地制度がある。これ、孟子先生が付けた名前です。土地があって、これをまず縦と横に9等分する。そして外側の8個の土地を8個の家族で使う。真ん中の土地は2~3日交替で、それぞれの家族がやってきて耕す。じゃあ真ん中で収穫された作物は誰のものになるか…?答えは国のものなんです!

 

生徒:なるほど!上から見ると9等分した土地が井の字に見えるから“井田法”なんですね!

 

しま:さて、いよいよ紀元前771年。異民族が入ってきます!犬戎と言います。ただし、ピストルは持ってないよ!…なんちゃって!

 

生徒:シーン…

 

ははっ!先生おもしろいっ!(誰かの笑い声)

 

しま:犬戎という漢字を見れば東西南北どこから入ってきたかはわかるよね?そう、西だな!(西の異民族=西戎)よって、都を西の鎬京から東の洛邑へと遷す。そして東周が始まるんだ!さて、犬戎が入ってきたということは、封建制度に基づいて諸侯のみんなは周王である俺を守らないといけないよな。中でも有力な諸侯が5人居て、“春秋の五覇”という。彼らは自ら王を守る“覇者”と名乗り、尊王攘夷を行うんだ!

 

生徒:尊王攘夷って…王を尊び、夷狄を追い払う…って意味ですよね!?

 

しま:そうそう!この春秋の五覇、もちろん全員覚える!

 

<春秋の五覇>

斉:桓公(かんこう)

晋:文公(ぶんこう)

楚:荘王(そうおう)

呉:闔閭(こうりょ)or夫差(ふさ)

越:勾践(こうせん)

 

しま:呉と越は常にケンカしてるんですよ。で、越王の勾践に敗れて亡くなった闔閭の息子である夫差は、親の仇を取るため毎夜、薪の中に寝て仇討ちの心をかきたてている。そして三年後、ついに勾践を降伏させるんだけど、今度は勾践が、復讐の念を忘れないためにと苦い熊の胆をなめる!で、最終的に呉の夫差を打ち破る!

 

生徒:あれ??なんか見たことある漢字がちょくちょく…

 

しま:「臥薪」とは、堅くて痛い薪の上に寝ること。「嘗胆」とは、苦い肝をなめること。そう、すなわち!“臥薪嘗胆”という故事成語は、この呉と越とのエピソードから来ているんですね!(ここまで覚えなくていいよ!)

 

生徒:ん??もしかして“呉越同舟”もここから生まれた言葉?

 

しま:よく知ってるね!“呉越同舟”は、敵同士だった呉と越の人たちがたまたま同じ舟に乗り合わせて、暴風に襲われて舟が転覆しそうになった時、互いに助け合ったというエピソードから生まれた言葉なんだ!

 

生徒:なんか、またまた賢くなった気分!

 

しま:それも気のせいだよ!よし!ここからは東周の後半期。戦国時代[前403年~前221年]のお話だ!先にプリント見てください。“王と称して周王を無視”と書かれている。おぃおぃ…周王は守らなきゃいけない存在なのに、なんで無視してるんだ!?おかしいだろ!一体何が起きたんだ??

 

生徒:えっと…これってつまり下剋上が起きているっていうことですよね?なんでだろ…周王が頼りなくなっちゃったとか?

 

しま:よし、説明しよう。ここは周だ。俺は周王。みんなは諸侯だ。授業をやっていたら突然異民族が入ってきた。犬戎だな。さぁそこで、1・2・3・4・5人!はい、俺を守るために、立ち上がった!「先生、僕たちに任せてくださいよ!」それがさっき勉強した“春秋の五覇”だ。…俺は、そんな5人にすっかり甘えていたんだ…。特に、俺が一番信頼してたのは晋君だった。晋君のことが大好きだった。

 

 

 

しま(周王)「えっと、紀元前の771年に犬戎が侵入してきましたー。まぁ、ケンジュウと言ってもピストルは持ってないけどね!なんちゃって!!!」

 

シーン…

 

晋君「ははっ!先生!本当におもしろいですねぇぇぇ!」

 

 

しま(周王)「しんくーん♡!」

 

ってやってたんだよ!いつも晋君はおもしろそうに笑ってくれていたんだ。でも本当は…ただ、先生に気を遣ってくれていただけなんだ。そしてとうとう彼は疲れ切って…3つに分裂しちゃった。

 

生徒:え!?急にサイコ。

 

しま:いや!本当は国だから!まぁとにかく、一番信頼していた晋君が居なくなっちゃったんですよ。授業なんてやってられません…あーあ…悲しいなー…晋くーん…。はぁ…。って感じ。そしたら諸侯のみんなはどう思うよ!?

 

諸侯A「先生!はやく授業やってくださいよ!」

 

しま(周王)「はぁ…かなしい…はぁ…」

 

諸侯B「…もう…なんだよこいつ!こんなんだったらの俺が授業やった方がましだわ!」

 

そんなことを言いながら教壇に7人が上がってきたよ!これが“戦国の七雄”だ!そして7人が俺を囲んだよ。最初にやられるのは?…俺だよ俺。周王が最初にやられてる!その後は、この7人による教卓争いだ。順番に倒れていくんだけど、これ、都が落ちた時か、王が死んだ年かで見解が変わるんだ。ただ、最初の韓と、最後の斉➡秦の順番は間違いないから、ここだけは覚えておこう。

 

生徒:戦国の七雄も全て暗記ですか?

 

しま:もちろん!