読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.16(東)秦の始皇帝

しま:さ!今日はあまりにも有名な秦の始皇帝のお話!生前の実名は政!皇帝という称号を始めて使ったから“始皇帝”です!

 

生徒:あれ?秦って戦国の七雄の秦と同じですか?

 

しま:もちろんおんなじ!もともと秦は、戦国時代に孝公という王の時、法家である商鞅の改革によって国力を増大させていました。これを“商鞅の変法”と言います。変法の内容は、「什伍(じゅうご)の制」。隣組って分かるかな?納税や防犯の連帯責任をとらせるため組を作らせたんです。どこかの家が犯罪者をかくまったりしたら隣組全体が罰せられる!税金を納めなくても連帯責任。それが什伍の制!

 

生徒:で、紀元前221年に政が中国初統一を果たすんですね!

 

しま:そういうこと!

 

生徒:この間、万里の長城始皇帝オリジナルじゃなくて、戦国時代に秦・趙・燕が建設したものを繋げたっていう話は聞きましたけど…始皇帝って他に何したんですか?

 

しま:いっぱいしてるよ!始皇帝の業績は、内政と外征に分けておさえよう!というわけで、まず内政。統治方法は郡県制です!

 

生徒:郡県制ってなんですのん?

 

しま:全国に郡、その下に県という行政組織を置いて、中央政府から官僚を派遣して直接支配を行うことです!地方は親戚におまかせ~、じゃなくなったんです!中央集権的な国家体制の誕生ですね!

 

生徒:プリントを見るといろいろ統一してますね。これもやっぱり中央集権化?

 

しま:そうだね。単純に、バラバラだと不便だからってのもある。箇条書きで確認しよう!

 

①車軌(しゃき)の統一➡車軌は馬車の車輪と車輪の間の長さのこと。車軌が違うと、ぬかるんだ道なんかが走りにくくて不便ですね。

②度量衡(どりょうこう)の統一➡度は長さ、量は容積、衡は重さのこと。単位が地域ごとで異なっていると、買い物するときも混乱するよね。

③文字の統一➡小篆

④貨幣の統一➡半両銭(戦国時代の円銭がもと)

 

しま:ついでに思想も統制しているよ。

 

生徒:マインドコントロールですか!?

 

しま:始皇帝の場合、“焚書坑儒”(ふんしょこうじゅ)という。これ、丞相である李斯の献策(アドバイス)によって行われました。簡単に言うと、始皇帝の政治に批判的な学問は消し去ってしまえ!ってこと。まず焚書だけど、これは書物を燃やすこと。入試では「燃やされなかったのは何か」って出題されるから、そこをおさえよう。ズバリ、医学、農業、占いです!

 

生徒:ってことは、この焚書が無ければもっとたくさん学問の成果が残されてたと…、残念。

 

しま:で、坑儒とは、儒者者を生き埋めにしてしまうこと。究極の思想統制ですね。

 

生徒:おそろしや~…

 

しま:よしっ!じゃあ次は外征だ。秦は北方の遊牧国家である匈奴に討伐軍を派遣します。これを託されたのが蒙恬(もうてん)という人物!難しいけど、入試では意外によく出題されます。まさに入試の“盲点”なんちゃって。

 

生徒:

 

しま:なんか言えよ!

 

生徒:あれ、先生?思想統制ですか?

 

しま:…。さて、ベトナム北部にも領土を拡大してます。で、征服したところに南海郡、象郡、桂林郡の3郡を設置した!

 

生徒:うわっ!なんじゃこりゃ!!!

 

しま:どうした!?

 

生徒:図表を見たら同じ顔したマネキンがずらーっと並んでるんですよ!なんすかこれ!

 

しま:あー、兵馬俑のことね!始皇帝のお墓を守っている軍隊だよ。こんなのが約三千体も発掘されてる!あと“同じ顔した”って言ったけど、これ、埴輪と同じで土や草木を混ぜて作っていて、よく見るとぜーんぶ表情や髪型が少しずつ違うんだよ。

 

生徒:始皇帝の権力のすごさが伝わってきます!手に入らないものなんて無かったんだろうなぁ…

 

しま:それが、一つだけあった。

 

生徒:え!?なんですか!?

 

しま:不老不死だよ。彼は永遠の命を手に入れようとしたんだ。そんな始皇帝を見て、明らかに胡散臭い連中が近づいてくるんですよ。中には「水銀が長寿の薬です!」なんて教える人も出てくる。で、始皇帝は水銀を毎日少しずつ飲んじゃうんですよ。まぁ、それが原因かはわからないけど、始皇帝は前210年に亡くなります。始皇帝が居なくなった秦は、滅亡へと向かいます。滅亡の大きなきっかけとなったのが陳勝・呉公の乱。陳勝は、その日その日の雇われ仕事でなんとか生活をしていた貧しい農民。その陳勝のもとに、政府から辺境防備の呼び出しがかかる。始皇帝が死んだ翌年の前209年のことです。ところが、大雨が降って川が氾濫、先に進めない。決められた日までに着かないと処刑。だから急がなくちゃいけない。でも、水が引かない。かといって故郷に帰っても役人に追われて処刑。逃亡しても、のたれ死ぬのは時間の問題…。

 

生徒:どの選択をしても、待っているのは死!究極のトロッコ問題!

 

しま:そうなんだよ。だから陳勝は、「どうせ処刑されるくらいなら、いっそ秦に反乱だ!」と考えた。ただ、1人じゃ勝てない。そこで農民たちに呼びかけるんだ。

 

  「王侯将相いずくんぞ種あらんや!」

 

生徒:…どういう意味ですか?

 

しま:王、諸侯、将軍、丞相…生まれによって身分は決まるだろうか?…いや、決まらない!!!おかしい!そう、反語だ。反骨精神だ。こうして身分も何にもない、貧しい農民が歴史の舞台に登場してくるんです!まさにチャイニーズドリーム!…とは言っても、彼らは戦争のプロじゃないから、都の咸陽から秦の部隊がやってくると鎮圧されてまう。ただ、誰も逆らえなかった秦に対して初めて立ち向かったっていうところがすごいんです。この後、反乱は全国に広がっていきます。

 

生徒:いよいよ滅亡も近いですね!

 

しま:ほい!で、全国に拡大した反乱軍のリーダーになったのが項羽です。項羽は楚の国の名門貴族。身長180以上。強いです。で、反乱軍のリーダーとしてもうひとり有名なのが劉邦。ただ、こっちはガラが悪い農民。このあと項羽と劉邦はライバルになるんだけど、とっても対照的なんですよ。項羽は自分に自信があって、ほとんど人を頼らない。劉邦はちがう。何も持ってないからこそ、仲間を大切にする。

 

生徒:個人的には劉邦みたいなリーダーがいいなぁ…

 

しま:秦の政府は大混乱中です。三世皇帝は自分の首に縄を掛けて劉邦のもとに出向いてきました。すなわち、全面降伏です。こうして、秦は、前206年に滅亡してしまいました。たったの15年の統治でした。