読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

歴史総合No.9~大西洋をこえて広がった革命~

しま:さて、ナポレオンがライプツィヒの戦い(=諸国民戦争)に負け、”エルバへさらば”したところで、ウィーン会議が開かれました。1814年です。この会議の目的は、フランス革命ナポレオン戦争によって混乱したヨーロッパの秩序を回復すること!

生徒:ウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

しま:…会議の参加国は、オスマン帝国を除く全ヨーロッパの君主・政治家たち。議長はオーストリアの外相メッテルニヒです。この人は自由とか平等とが大嫌いな人。さて、ここで問題です!この会議の参加国の中で一番居心地が悪いのはどこの国でしょう!?

生徒:えっと…この会議の原因を作った、フランスですか?

しま:正解!ヨーロッパを混乱させたのはフランスですから、周りから「お前のせいだ!」と言われてしまえば、「そうちゃむ…。」と言うしか無いですよね。領土や賠償金を取られる大ピンチです。そこで登場したのがフランス外相タレーラン!彼は起死回生の理屈を持ち出した。それが「正統主義」という考え方です!

生徒:ん?正統…?どういう考えです?

しま:「“フランス革命前の主権と領土”こそ正統だ!」と言うわけです。つまり、すべてを革命の前の状態に戻しませんか!?と。

生徒:…はっ!そうすれば領土を失うことも無ければ賠償金を払う必要もないですもんね!

しま:その通り。悪いのは”フランス”ではなくて”革命”なんだ、というわけです。結局この原則が受け入れられることになりる。ただ、そっくりそのまま元通りにはできませんから、勢力均衡の原則のもと、領土の移動や体制の変更が行われます。まぁ結局は、ナポレオン戦争で勝った国が得をすることになるんです。

生徒:でも、ヨーロッパ全土から代表が集まっていたんじゃ、お互いの利害がぶつかり合って、なかなか話が進まないんじゃないですか?

しま:そうなんだよ。なかなか会議が進まない。進まないんだけど、集まっているのは各国の貴族階級ばかりだから、夜になったらパーリナイ。華やかな舞踏会が開かれ、毎晩踊ってるんです。だから言われたよ、「会議は踊る、されど進まず」ってね。

会議は踊る、されど進まず


生徒:なるほど!それがこの風刺画なんですね!

しま:ダンシングしてるうちにナポレオンがエルバ島から脱出しちゃって…はよせな!ということで、ようやく1815年、ウィーン議定書締結です。

生徒:またフランスに王様が戻って来たんですね。ルイ16世!

 

しま:そうそう。「いやぁマジでギロチンって本当に一瞬なんすね」…ってバカ!ルイ16世は死んじゃってるから弟のルイ18世ね!

 

生徒:そっか。


しま:ちなみにドイツには、35の君主国と4の自由市から構成されるドイツ連邦が結成されます。その盟主がオーストリア!このへんはNo.11とかかわってきます。プリントではこの後ラテンアメリカの話になるけど、フランスの話を先にしちゃおう!

 

生徒:先生!ドラクロワの絵ってかっこいいですよね。一番好きなのは、「民衆を導く自由の女神」という作品です。たぶん先生は知らないと思いますけど、すごい素敵な絵ですよ。これ。

 

民衆を導く自由の女神

 

しま:もちろん知ってますし、教科書にも載ってる彼の代表作です。これは、1830年に起きたフランスの七月革命を題材とした作品なんです。何かの映画の一場面に似てると思いませんか?ほら、トリコロールを掲げて、民衆が立ち上がっている感じ!

 

生徒:わかった!レだ!レ!

 

しま:たぶん正解。2012年に映画も大ヒットした「レ・ミゼラブル」ですね。これがちょうどこの頃のフランスのお話で、もともとは、<ヴィクトル=ユーゴー>という人の小説。さて、ここからはそんな七月革命の勉強です!さぁ…復習。ウィーン議定書によって、フランスには何朝が復活しましたか?

 

生徒:そんなの耳ふさいでても答えられますよ!………えっと…何て言いました??

 

しま:耳ふさぐなよ!ウィーン議定書によって、フランスとスペインと両シチリア王国に復活した王朝はなーに??

 

生徒:はい!ブルボン朝

 

しま:正解。ルイ16世の弟のルイ18世が即位しました。この人がまた頑固な人で…極端な制限選挙を実施した結果、有権者はなんとたったの0.3%になります!

 

生徒:そんなの、民衆が黙ってない!

 

しま:ルイ18世が病気で亡くなると、弟のシャルル10世が国王として即位するんだけど…これがさらにひどかった!もはやアンシャン=レジームへの逆戻りと言わんばかり!

 

生徒:まーたあのピラミッドですか!?なんのための革命だったんですか!こうなりゃもう一回革命やるしかないですね……って、あれ…先生、僕すごいことに気づいちゃったかもしれません。

 

しま:なんですか?

 

生徒:今から起こる七月革命と…その後に起こる二月革命って、この間まで勉強していた1789年に始まるフランス革命をただゆっくり繰り返しているだけじゃないですか?

 

しま:鋭すぎぃ!そうなんです!リセットして、スロー再生している…そんなイメージ!さて、シャルル10世は民衆を黙らせるために七月勅令を出します。言論統制!選挙法改悪!良いからお前ら民衆は黙ってろ!って感じの内容ですね。

 

生徒:でも黙ってるはずが無い!だから立ち上がる…それが、七月革命だ!

 

しま:その通り!この革命は、たった三日間で決着が付いたので「栄光の三日間」と呼ばれます。シャルル10世は亡命し、新たに親戚のオルレアン家の王ルイ=フィリップが即位して、七月王政スタートです!ところで、きみ、小石を池に投げ入れてくれる? 

 

生徒:いや、ここ教室だと思ってましたwなんで中庭なんすか。まぁいいや、小石…小石…小石無いです。

 

しま:そう。じゃあ小銭にする?小銭持ってるよな?

 

生徒:すいません、小石ありました。えいっ

 

(ポチャーン…ふわわわゎん)

 

しま:どう?

 

生徒:波紋が広がりましたね

 

しま:そう!まさにそこ!!!今、投げ入れた小石がフランスです!フランスで七月革命が起こると、その影響が波紋のようにヨーロッパ全体へと広がっていく…。まさに今見た感じ!

 

生徒:なるほど!

 

しま:例えば、イタリアではカルボナリが革命運動を起こすけど失敗。新たに青年イタリアという組織が結成されたり。あと、これもまた後で詳しく話しますが、1832年にイギリスで第1回選挙法改正が行われるのも、この七月革命の影響です。

 

生徒:なるほど。

 

しま:さて、フランスでは1830年に起きた七月革命で新たにルイ=フィリップを国王とした、”オルレアン朝七月王政”が誕生しました!この人の自称は「市民の王」。みんなから人気があると思ってる。でも実際は「株屋の王」。お金持ちのためにしか政治を行わない!と批判されているのです。

 

生徒:それで、こんな風刺画を描かれてしまっているわけですね。

梨王<ルイ゠フィリップ>


しま:選挙権を持っている人はわずか1%。でも、考えてください。フランスでも産業革命が起こって、産業資本家や労働者が力を付けてきてるわけですよ。それなのに有権者1%はひどい!ってことで、労働者は選挙権要求運動を起こします。

 

生徒:選挙権!選挙権!!選挙権!!!

 

しま:そこへ、<ギゾー>首相が登場してきて一言、こう言うわけです。

 

「なに?きみたちそんなに選挙権が欲しいの?」

 

生徒:選挙権!選挙権!!選挙権!!!

 

「あーそう。そんなに選挙権が欲しいんなら…金持ちになりたまえ。じゃ。」

 

生徒:ムカーーー!!!

 

しま:でしょ!?ムカつくでしょ!?この民衆の怒りは、パリでの選挙権要求運動…いわゆる改革宴会が武力で鎮圧されたところでピークに達します。

 

生徒:二月革命ですね!

 

しま:その通り!1848年に二月革命が起こると国王ルイ=フィリップは亡命。国王が居なくなったので、これより第二共和政となります。臨時政府には、共和派のラマルティーヌや、社会主義者のルイ=ブランなどが参加します。すごいですよ、何しろジャコバン派以来の男性普通選挙ですから。ルイ=ブランは、失業者対策として国立作業場という施設を作ったりしている!

 

生徒:もうパリの街はルイ=ブラン一色ですね!

 

ルイ=ブラン!ルイ=ブラン!ルイ=ブラン!

 

しま:そんな感じ!で、いよいよ4月、四月普通選挙が行われ…開票してみたら、はい!!!ルイ=ブラン落選!!!

 

生徒:ホワィッ!!!

 

しま:簡単なことです。フランスはパリだけじゃないんですよ。確かにパリは労働者がたくさん居る。でもフランス全体は農業国ですからね。農民の方が多いわけよ。もし、ルイ=ブランが勝って社会主義になっちゃったら?農民の土地はどうなっちゃう?

 

生徒:国のものになっちゃう…。そっか…。それで保守化しちゃったのか…

 

しま:そういうこと。ただ、これには労働者は不満ですよ。さっきの国立作業場が6月に閉鎖されたことをきっかけに、暴れだします。明らかに社会が混乱している。ほら、フランス総裁政府の時にクーデタが多発した時みたいに…。

 

生徒:あの時は確か、ナポレオン=ボナパルトが登場して、混乱を沈めたんでしたよね。…はっ!まさか!!!

 

しま:まさか??

 

生徒:ナポレオン=ボナパルトセントヘレナ島より脱出ですか!?

 

しま:いや、とっくに亡くなってます!ナポレオンの弟の息子…つまり、ナポレオンの甥にあたる、ルイ=ナポレオンがここで登場してくるんです!!!

 

生徒:知名度がすごいから、名前だけで当選しちゃいそうですね!

 

しま:すごいですよ。軍人はもちろん、農民、労働者、あらゆる層の支持を集めて大統領に就任しちゃう。そして国民投票で皇帝ナポレオン3世となり、第二帝政開始です!でも、プロイセン゠フランス戦争に負けちゃって人気急降下…と、このへんの話はNo.11でしましょう!

 

生徒:先生!1848年に戻ってください!

 

しま:そうでした。さて、ドイツで三月革命が起こります。オーストリアの首都ウィーンと、プロイセンの首都ベルリンですね。ウィーンでの三月革命により、メッテルニヒはイギリスへ亡命する。一応これでウィーン体制は崩壊!

 

生徒:なるほど。ウィーン会議の主催者が居なくなっちゃったんですもんね。

 

しま:三月革命など、1848年に起こった二月革命の影響による自由主義国民主義の高まりには名前が付いています。それが「諸国民の春」!

 

生徒:国民意識が芽吹いたわけですね!

 

しま:では、最後にラテンアメリカを簡単に整理しましょう!最初に独立したのはハイチですが、先生はこれを「ハイチ、3つの特別」としつこく話しています!

 

トゥサン゠ルーヴェルテュール

 

生徒:3つの特別…ですか?

 

しま:まず、1つ目…1804年という早い時期(1806年以前)に独立したこと。2つ目…フランスから独立したこと。3つ目…黒人共和国だということ。以上3つです。

 

生徒:なるほど、つまりハイチ以外のラテンアメリカ諸国はそうじゃない…!ということか!

 

しま:そういうこと。独立の背景として、ナポレオンが1806年に出した大陸封鎖令が大きく影響してるんだけど…これがどんな法律だったか、覚えてる?

 

生徒:えっと…イギリスと大陸諸国との貿易を禁止して、イギリスに打撃を与えようとした法律!

 

しま:ですね。当然ここで言う大陸諸国にはスペインやポルトガルも入っているから、ラテンアメリカ諸国との連絡が途絶えちゃうんですよ。これが大きかった!

 

生徒:独立運動が起きても、すぐには止めに行けなかったわけですね!

 

しま:そういうこと!

 

生徒:これって…独立した国と、その指導者の名前をセットで覚えるんですか?

 

しま:そう!ハイチだったらトゥサン゠ルーヴェルテュールだし、ペルーだったらサン゠マルティン!あと、ブラジルはポルトガルからの独立という点も抑えておこう。ラテンアメリカ諸国はほとんどがスペインの植民地だったけど、ブラジルだけは違ったんだな。というわけで、イギリスの産業革命からアメリカ独立革命フランス革命を経て、ラテンアメリカの独立に至る一連の変動をまとめて…

 

生徒:「環大西洋革命」と呼ぶ!

 

しま:その通り!