No.9(西)内乱の一世紀②
しま:世界はグー・チョキ・パーで、だから楽しくなる♪みんなちがうからあいこでしょ♪
生徒:え。それ何の曲ですか?
しま:武田鉄矢の「世界はグー・チョキ・パー」でしょうが!このバカチンがぁ!『ドラえもんのび太と夢幻三剣士』の主題歌でしょうが!
生徒:その映画、1994年公開ですよ。僕、まだ生まれてません。
しま:えっ!?マジ!?まぁ言うて俺も当時3才だけどね。この歌詞が今でも心に残ってるんだー。3才の俺は、同じものを出すことがあいこだと思っていた。でも、この歌はみんな違うものを出してもあいこなんだってことを俺に教えてくれた。みんなそれぞれに個性があって、それに優劣は付けられないってことに気づかせてくれたんだよ。
生徒:いや、3才の考えることじゃない。先生って絶対かわいくなかったですよね。
しま:大人びてたってことね!で、この歌詞と今日勉強していく三頭政治の構図がなんとなーく似てるんだ。というわけで、今日のテーマは三頭政治!
生徒:“みんなちがうからあいこでしょ、の三頭政治”ですね!OKです!
しま:よし!じゃあまず第1回三頭政治[前60~前53年]のメンバーを確認しよう!クラッスス、カエサル、ポンペイウスだ!クラッススは、ローマ一の大富豪、カエサルはローマ一の人気者、ポンペイウスはローマ一の将軍!って感じかな?覚え方は、“クラス替えポン!”だ!
生徒:なるほど!じゃんけんがここにもかかって来るんですね!素晴らしいゴロや!
しま:この中で主役はカエサルです。カエサルに会う人はみんな彼のことが好きになっちゃう。みんなの人気者カエサル。そんなカエサルは前58~前51年にかけてガリア遠征を行って、ゲルマン人と戦います。ガリアってのは今のフランス。そして、カエサルは勝ち続ける。人気だけじゃなく実力も兼ね備えてくるんですよ。ちなみに、この時の記録『ガリア戦記』は、ゲルマン人社会を知る貴重な史料だよ!紀元後の1世紀にタキトゥスが書いた『ゲルマニア』とごっちゃにならないようにしよう!
生徒:あら、カエサルが頭1つ飛び出た感じですか?
しま:そんな感じ!で、そんな中クラッススがカルラエの戦い[前53年]でパルティアに敗れて戦死しちゃうんです。はい、第1回三頭政治崩壊。
生徒:1人減っちゃったらあいこが崩れちゃいます!
しま:その通り!残る2人、すなわちカエサルとポンペイウスの一騎打ちになる。この時、なんとポンペイウスは元老院と手を結んでカエサルを潰しにかかってきます。
生徒:元老院に対抗するために始まったはずの三頭政治のメンバーが、元老院と手を結ぶって、本末転倒ですね!
しま:そうなんです。これに対してカエサルは「賽(さい)は投げられた!」といってガリアから軍隊を率いてルビコン川を渡り、ローマで待つポンペイウスのもとへ進軍してきます。勝ったのはもちろん…?
生徒:カエサルですね!英語名で言うとシーサーだ!
しま:いや、シーサーじゃなくてシーザーね!この時カエサルは、逃げるポンペイウスを追ってエジプトまで向かうんだけど、ここであの有名なクレオパトラと出会います!
生徒:世界三大美女のうちの1人ですね!
しま:ちょっとここで当時のエジプトの状況について話しておこう。地中海世界がローマの領土になっていく中、エジプトは独立を維持していた。しかし、エジプトはいつローマの属州にされてもおかしくない状態。そんな危機なのにエジプト国内は、クレオパトラとその弟が王の座を巡って姉弟喧嘩してるんです。しかもクレオパトラは弟に軟禁されてる。そこでクレオパトラは考えた。もし、カエサルに会って自分の味方にすることが出来たら、弟を蹴落としてエジプトの真の女王になれる!そしてエジプトの独立も維持することができる!とね。ところが、弟の監視があるからなかなかカエサルに近づけない。そこで考えたのが「絨毯ぐるぐる巻き私がプレゼントよ作戦」。自分を絨毯でくるんで、エジプトの富豪からの贈り物だよーといって、カエサルの宿舎に届けさせた。カエサルが広げると、中からクレオパトラが飛び出てくる。そんなサプライズされたら、男なんてもうイチコロですわな。
生徒:なんかとってもロマンチックですね!
しま:ちなみにこの時、クレオパトラ21歳。カエサルは52歳です。
生徒:れ…れんあいに、年齢は…関係…そんなに無いですよ!
しま:ともかく、クレオパトラはカエサルを自分の虜にさせました!カエサルはクレオパトラを名実ともにエジプト女王とし、さらにエジプトの独立を保証したのです!
生徒:うわ!クレオパトラの思う壺っすね!男ってどうしてこう女に振り回されるんですかね!わかるけど!
しま:さて、ローマに戻ってきたカエサルは終身のディクタトルを名乗ります。事実上の独裁者です。
生徒:え…そんなことしたら、ローマの“独裁者アレルギー”が発症しちゃうんじゃないんですか?
しま:その通り。独裁者の登場は、誇り高き共和政が否定されることを意味するからね。特に敵意をむき出しにしたのがブルートゥスをリーダーとする共和主義者のグループでした。彼らによってカエサルは暗殺されてしまうのです。カエサルが最後に言った一言が…
生徒:「トゥーーース!!!」
しま:いや、元気かよ。「ブルートゥスお前もか」ね。さて、カエサルが暗殺されて間もなく、前43年からオクタウィアヌス・レピドゥス・アントニウスの三人による第2回三頭政治[前43~前36年]が始まります!オクタウィアヌスはカエサルの養子、レピドゥスとアントニウスはカエサルの部下です。“オクレア”と覚えよう!ただし、レピドゥスはすぐに失脚するので名前だけでOK。ローマ領の西をオクタウィアヌス、東をアントニウスで分担します。
生徒:そういえば、カエサルが居なくなってクレオパトラはどうなったんですか??
しま:東の領土を任されたアントニウスと出会うのです。そしてクレオパトラはカエサルに代わるパトロンとするべく、アントニウスに近づきます。そして2人は結婚。
生徒:カエサルの部下とくっついたんですか!
しま:そういうこと。そしてアントニウスはローマ領をクレオパトラに貢ぎ…おっと、譲ります!!勝手にこんな事をするからローマでのアントニウスの評判は悪くなるばかり。とうとう、オクタウィアヌスvsアントニウス・クレオパトラ連合軍の戦争が勃発します!それが前31年、アクティウムの海戦!結局アントニウス・クレオパトラ連合軍はオクタウィアヌスに敗れて二人はともに自殺。クレオパトラは毒蛇に咬ませて自殺したとか。
生徒:エジプトもローマの属州になったわけですね。
しま:その通り。前30年、プトレマイオス朝エジプトは滅亡し、約300年間に及ぶヘレニズム時代も同時に幕を閉じるわけです。さて、勝ったオクタウィアヌスは、ローマの政権を掌握していきます。前27年には、オクタウィアヌスは事実上の帝政を開始します!
生徒:なんで“事実上”なんですか??
しま:それは、カエサルの二の舞にならないよう、元老院を尊重して、共和政の伝統を守るポーズをとり続けたからです!
生徒:なるほど!独裁者アレルギーにうまく対応したのか!もっと詳しく!
しま:前27年、元老院は彼に「アウグストゥス」という称号を授けるんですが、これ「尊厳者」という意味なんです。これに対してオクタウィアヌスは「いや、私なんてただのプリンケプスですから…」と謙遜をしてみせる。プリンケプスは「第一の市民」という意味。だから、“事実上の”帝政なんです!プリンケプスによる帝政で、プリンキパトゥスと言います!
生徒:でも、これで共和政ローマは終わったわけですよね。長かったー!
しま:次回からは帝政ローマです!