読む世界史

書き残そう、世界の歴史の物語

No.1(西)エーゲ文明

しま:さて!今日から地中海世界へと入っていきます!ざぶーん!最初の舞台はエーゲ海だ!

 

生徒:気分一新で頑張ります!エーゲ文明って3つあるんですよね!?クレタ文明とミケーネ文明とトロイア文明!

 

しま:お、ちゃんと予習してきてるね!エーゲ文明はどれも青銅器文明だよ!じゃあ早速、クレタ文明から見ていこう!

 

生徒:褒められて嬉しい。わし、ご機嫌え~げ~!

 

しま:クレタ文明は、エーゲ海に浮かぶ最大の島、クレタ島で前2000年頃に起こった文明だ。1900年、イギリス人のエヴァンズという人がこの島の中央部、クノッソスで巨大な宮殿跡を発掘した。その宮殿は周囲に城壁が無く、数百の個室がまるで迷路のように複雑に配置されていた。そして、タコとかイルカとか、海の生き物たちが壁に生き生きと描かれていたんだ!

 

生徒:タコにイルカって!なんか平和的な文明!でも、なんで迷路みたいになってるんですか?

 

しま:実はこのクノッソス宮殿ミノタウロスという頭が牛で体が人間の化け物を閉じ込めるために作られた宮殿なんだ。なんでそんな化け物が生まれたかっていうと、ミノス王というクレタ王国の王様が原因なんだけど、それを話してると長くなっちゃうから、授業でね!

 

生徒:頭が牛で体が人間ってバランス悪くないですか?シュールですね。

 

しま:さて、文明と言えば文字が付き物だけど、クレタ文明の文字は絵文字と線文字A!どちらも未解読です!で、クレタ文明は前1400年には滅ぶ。原因はギリシア人の一派であるアカイア人の南下とされている。

 

生徒:あれ?ミケーネ文明が生まれたのが前1600年頃になってますけど、これってもしかしてアカイア人が南下してくる途中でつくりだした文明…ってことですか?

 

しま:その通り!ミケーネ文明は、バルカン半島から南下してきたアカイア人が、ペロポネソス半島に定住し、ミケーネやティリンスというまちを中心に築いた青銅器文明だ!こっちはクレタと対照的で、城壁があって戦闘的!アガメムノンの王宮の前の“獅子門”は教科書にも載ってる!専制的な統治体制だったらしい。で、文字だけど、ミケーネ文明は線文字B!これはAと違って解読されているよ。解読したのはイギリス人のヴェントリスさん。

 

生徒:クレタ文明を発掘したのがエヴァンズで、ミケーネ文明の線文字Bを解読したのがヴェントリス…まぎらわしい。

 

しま:そう!間違えないようにね。さて、ミケーネ文明も前1200年頃には滅んじゃうんだけど…原因は「海の民」の侵入と言われている!

 

生徒:あ!出た、海の民!海の民って確か同じ頃にヒッタイトも滅ぼしてましたよね!

 

しま:お!よく覚えてた!さて、残す一つはトロイア文明だ!これは前2000年頃~前1200年頃の文明で、小アジア西北部のトロイアが中心!

 

生徒:あれ?先生!ミケーネ文明の発掘者飛ばしちゃってますよー

 

しま:それ、あえて飛ばしたの。と言うのも、ミケーネ文明とトロイア文明はどちらも発掘者が同じなんだ!ところで、コラムは読んでくれた?

 

生徒:あ!読みましたよ!あれっていわゆるギリシア神話ですよね??

 

しま:そうそう。戦での勝利よりも美を選ぶあたり、ギリシア人の美意識が垣間見えておもしろかったでしょ?ところでさ……あの話、実話だと思った??

 

生徒:いやまさかw神と人間が結婚して、林檎が飛んできて女神が嫉妬して喧嘩して人間が判定して人妻もらって戦争になったって…どんだけっすかw神話は神話でしょww

 

しま:じゃあもしも、あの話を信じて、そして本当にミケーネやトロイアの遺跡を発掘しようと行動した人物が居たとしたら…??

 

生徒:……。。。まさか………居るんですか!?そんな情熱的なヤツが!!!

 

しま:…彼の名はシュリーマン。8歳のときに父親からプレゼントされた『子どものための世界史』に描かれていたトロイアが炎上する挿絵の虜になり、いつかその場を訪れることを誓った。ホメロスの『イリアス』に描かれたトロイア戦争は“空想の物語”であると父親にいくら言われても、シュリーマンはそれを“史実”として信じ続け、ついに40歳を過ぎてから、全財産をかけてトロイア発掘に乗り出すのであった…。

 

生徒:すごい古代への情熱だ…それで本当に発掘しちゃうんですか?

 

しま:しちゃう。

 

生徒:なんか…嘘みたいですね!

 

しま:嘘らしいよ。

 

生徒:えっ

 

しま:シュリーマンって本当は幼少期にトロイア戦争に興味なんて無かったらしい。トロイアの発掘も、勝手に財宝を売りさばこうとして急いで発掘を進めちゃったもんだから、損傷が激しくて修復不可能みたいだし…。

 

生徒:ん?あれ?もしかしてシュリーマンって言うほど…?

 

しま:シュリーマンの自伝である『古代への情熱』に書かれている“幼少時代からの夢の実現”というストーリーが捏造だったとしても、発掘が雑で歴史的な損失があったとしても、シュリーマンが知られざる遺跡の発掘という偉業を成し遂げたことは紛れもない事実!とりあえず、これは世界史の授業だし、その事実だけを見つめることにしましょう。

 

生徒:事実…そうですね。世界史は1つの事実をいろんな角度から捉える学問ですもんね。

 

しま:その通り。というわけで、ミケーネとトロイアが争ったトロイア戦争の始まりが、本当に黄金の林檎なのかどうかは分からないけど、トロイア戦争のことがホメロス叙事詩である『イリアス』や『オデュッセイア』に書かれていることは確かな事実。ちなみに、『イリアス』が戦争中、『オデュッセイア』は戦争後のことについて書かれているよ!

 

生徒:あれ?なんか僕“トロイの木馬”って聞いたことあるんですけど、それもこのトロイア戦争と関係ありますか?

 

しま:トロイの木馬ってのはミケーネ側の考えたトロイア戦争終結させるための最終作戦だ。ある時、トロイア兵は今日も戦かなー、と思って海岸に出てみた。すると、そこには居るはずのギリシア軍がいない!代わりに残されていたのは大きな木馬だった。なんだ、ギリシア軍はとうとう諦めてエーゲ海を渡って撤退したのか!これは帰りの船旅の無事を祈る海の神ポセイドンへの捧げものだ!我々の勝利だ!と喜ぶトロイア兵たち。それならば!と、海岸に残された木馬を戦利品とし、トロイア城内に持ち込みます。夜になると、トロイア兵は勝利を祝してどんちゃん騒ぎ。やがてトロイア兵たちは酔いつぶれる。すると、木馬の中にひっそりと隠れていたギリシア軍が出てくる出てくる。そして、内側から城門を開き、外の兵と合流してトロイア兵を倒しまくるのです!みんなも、もし家の前に木馬が置いてあっても、安易に部屋の中に運び入れないように気を付けようね!

 

生徒:いや、木馬なんて要らないでしょ。

 
しま:でも、例えば木馬じゃなくてコーラが置いてあったら、とりあえず飲んじゃうじゃん?
 
生徒:いや、飲まねーよ!